昨年、創業70周年を迎え、みそをはじめ近年は同じ大豆を原料とした「豆乳」を展開するマルサンアイ。前9月期は売上高300億円を突破、23年度までの中期事業計画の売上目標をすでに達成し好調な一方で、営業利益は原料費の増加などにより利益率の改善が課題になっている。その中で昨年12月、新社長として堺信好氏にバトンが渡され、新たな一歩を踏み出している。
堺社長は、1983年に入社。関西地区を中心に営業職として研鑽を積み、「多くの人との出会いによって、コミュニケーション能力に自信が持てるようになった。今も経営の事業構築においてより良い方向を模索し進めていく中で、社員と頻繁にコミュニケーションをとるよう心掛けている」と話す。
2009年には、子会社で玉井味噌(長野県)の取締役に、13年から同社社長に就任。ものづくりは「真面目に丁寧に」と言い続け、今では社訓として根付く。「真面目に丁寧に」の思いで開発された商品の一つ、信州みそ「匠」シリーズは、順調に売上を伸ばす定番商品に成長している。経営に携わるようになり、グループ全体で包括的に取り組み最適化を図っている。
今後の事業展開では、「豆乳」「みそ」に続く第3の柱の育成を早急に進める。「豆乳」では、健康志向の高まりで市場が拡大、昨年には子会社「匠美」で豆乳工場を新設し、業務用の原料としての需要に備えた供給設備体制も強化した。
「みそ」の市場は年々縮小傾向にある中、簡便即食に対応した液状の「鮮度みそ」は、開封後も常温で90日間保存できる便利さで利用が広がっている。
それらに続く第3の柱の候補として「アーモンドミルク」「オーツミルク」は、まだ市場が小さいものの好調。さらに植物性食品の「豆乳グルト」や、チーズタイプの「豆乳シュレッド」「豆乳スライス」のチルド製品にも力を入れる。乳アレルギーのお客様にも支持されているという。
植物性食品、飲料を求める声は根強く、今後もプラントベースフードの企業として存在感を発揮する。
利益面については、物流費や原料費などの高騰で厳しい状況ではあるが、付加価値ある商品の開発を進める一方で、DXを使って仕事のデジタル化をすることで日常業務のムダを省き、コストを削減することで継続的に利益が生み出せる「体力づくり」をしていく考え。
社員全体でコストについての意識を強め、生産や配送の効率化でより良いサプライチェーンを構築する。
また、SDGsにも積極的に取り組む。食品ロス削減でフードバンクへ寄付を行うほか、昨年リニューアル発売した「ひとつ上の豆乳」シリーズでは、バイオマスプラスチックを使用したストローを採用した。
「配荷は好調で、消費者も環境への意識が高まっている。これからは環境に配慮した商品でなければ受け入れられないようになっていくと思われ、しっかりと取り組んでいきたい」。