「ちょっといいビール」を 減税追い風に缶復権 大手が相次ぎテコ入れ

20年10月の酒税率引き下げの恩恵により、久々の活況を呈している缶ビール。この10年ほど新ジャンルに押され気味だったが、21年の市場は113%と2ケタ増を記録した。このチャンスに、大手は相次ぎテコ入れに乗り出す。

「SD」36年目の大刷新

発売から36年目にして初の全面リニューアルを実施するのが「アサヒスーパードライ」だ。中身とともに缶体のデザインにも磨きをかけ、2月中旬製造分から順次切り替える。

インテージの調べによれば、全消費財のうちでも「スーパードライ」は圧倒的ナンバー1の販売規模を誇る日本最大のブランド。誰もが知る超定番だけに「フルリニューアルは私たちにとっても簡単にはできない決断だった」と、アサヒビールの松山一雄専務は語る。

「発売当時は皆が同じ社会的成功に向けてステップアップしていく時代だったが、今は成功の定義が多様化。自分らしく前に進んでいく時代だ。それに重ねて、時代とともに歩んでいくブランドにしたい」(松山氏)。

スーパードライといえば「辛口」。だが同社の消費者調査では、この概念が誤解されていることが分かった。

「『辛口』のイメージを聞いたところ最も多かったのは『苦い』という回答。だが私たちが考える辛口とは、飲みごたえとその後のキレの落差。そこが正しく理解されていなかった」(同)。

製法の進化だけでなく、処方変更にまで踏み込んだ。「だが味が変わるのかといえばノーだ。SDが辛口でなくなれば一般のビールと同じ。辛口から、新辛口へ。SDらしさを失わないようにしつつ、飲んだ瞬間にさっと消えるキレのよさにチャレンジした」。

発売に合わせ、同社史上最大規模の広告投資を実施。また昨年4月に発売し今も品薄が続く「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」も泡立ちをさらに高めて刷新するとともに、生産量を5倍に増やす計画だ。

「スプリングバレー 豊潤〈496〉」(キリンビール) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「スプリングバレー 豊潤〈496〉」(キリンビール)

キリンビールは、昨年3月発売のクラフトビール「スプリングバレー 豊潤〈496〉」をリニューアル。新たに日本産ホップを使用し、味わいや香りのバランスを高めた。同社では24年までにクラフトビール市場を全ビール類の2%超とすることを目指す。

「21年はビールカテゴリーが再成長に向けて動き出した年。酒税改正をきっかけにこれまでビールを手にしてこなかった人々もトライアルするようになり、缶市場は増加傾向だ。フラッグシップ『一番搾り』への注力とともに、『豊潤496』の成長にも拍車をかける。ビールを魅力あるものにして、市場を活性化させたい」(キリンビール 堀口英樹社長)。

「プレモル」最高峰は実売260円

「マスターズドリーム〈無濾過〉」(サントリービール) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「マスターズドリーム〈無濾過〉」(サントリービール)

プレミアムビールのリーディングブランド「ザ・プレミアム・モルツ」でも最高峰と位置付ける「マスターズドリーム〈無濾過〉」を発売するサントリー。実売価格は国内主要銘柄でトップクラスの税別260円程度を想定する。

「『ちょっといいビールを飲みたい』というお客様は想像以上に多く、消費二極化に対応したプレミアム商品にとってチャンス。『たまには良いものを』から『本当に良いものを』『いつもと違う本物を』という方向に先鋭化していくだろう」(サントリービール 西田英一郎社長)。

「サッポロ生ビール黒ラベル」も2月製造分から順次リニューアル発売。麦のうまみと爽快な後味の完璧なバランスを目指し、「生のうまさ」をより一層進化させたという。

「黒ラベル」も刷新(サッポロビール) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「黒ラベル」も刷新(サッポロビール)

「10年以上にわたり中期的にビール強化に取り組み、フラッグシップの『黒ラベル』は客層の若返りによって継続成長を遂げた。他ブランドに見られない異次元の成長と自負している」(サッポロビール マーケティング本部 武内亮人氏)。

今年は「黒ラベル」「ヱビス」の両ブランドで、コロナ禍で減っているリアル体験の機会を拡充する方針。デジタルとの融合も進め、ブランドの個性と物語を伝える顧客接点を創出し熱狂的ファンの拡大を狙う。

EU農産品  - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)