酪農乳業界では年末年始期の処理不可能乳発生(生乳廃棄)が危惧されたが、官民挙げた呼び掛けや生産調整、製販の需要喚起施策、消費者の協力などにより、当面、生乳廃棄という最悪の事態を回避することができた。宮原道夫日本乳業協会会長が、2年ぶりに開催された「乳業団体合同新年賀詞交歓会」で、生乳需給の見通しや2022年の取り組みなどについて語った。
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新型コロナウイルス感染症の影響が長期にわたり、あらゆる産業に影響を与えている。酪農乳業界としても最大の関心事だ。牛乳乳製品の需要に目を向けると、昨年10月以降、緊急事態宣言などの解除により業務用乳製品需要の回復が期待されたが、依然として厳しい状況が続いている。家庭内消費についても、一昨年の巣ごもり需要の反動もあり低調に推移している状況だ。
一方、生乳生産は、2018年度の728万tを底に回復傾向にある。特に昨年は、夏場の気温が例年より低めに推移したこともあり、北海道、都府県とも前年を大きく上回って好調に推移している。これにより、飲用不需要期に需給が大幅に緩和し、処理不可能乳発生の恐れが例年以上に高まっているが、これまでの生産基盤強化に向けた関係者の努力が水泡に帰すことがないよう、当面はコロナ禍に伴う乳製品需給低迷という緊急事態に対処していかなければならない。
生乳生産が好調である一方、コロナ禍による業務用需要への影響が長引いている。乳製品在庫は過去最高水準に積み上がっており、過剰在庫を抱える乳業者には大きな負担となっている。今後も在庫は積み上がるものと予測されており、危機感を強めている。まず業界が一丸となり、先行して在庫削減に向けた支援対策をまとめるべく努めたところ、行政からの支援を得られることとなり感謝している。こうした取り組みにより需給の均衡を目指す。
世界に目を転じてみると、2015年の国連におけるSDGs(持続可能な開発目標)の採択を受け、農水省では「みどりの食料システム戦略」がとりまとめられるなど、環境に配慮した持続可能な食料生産が課題となっている。乳業者としても、SDGsに沿った温室効果ガス削減、容器包装の環境対応、食品ロス削減など環境問題への取り組みを進めていく。
2022年は、長引くコロナ禍の影響により、社会環境が大きく変わり、新しい生活様式(ニューノーマル)の定着が進む。日本の酪農乳業界も新たな視点での取り組みが求められている。当協会では、ウイズコロナ時代に対応し、外部発信力の強化とプレゼンスを高めるためデジタル化を推進し、新しい環境に対応した事業推進と課題の解決を図ることで、酪農乳業の発展のため一層力を発揮していきたい。