サッポロビール 酒の未来開拓へ 「あなたの時間彩る提案」を 野瀬裕之社長

3月30日にサッポロビール社長に就任した野瀬裕之氏。コロナ禍の最中だったが、事業を「冷静に見る契機になった」と語る。コロナが広がる前からビールなどの消費量は減少していたが、「われわれの存在意義や、酒類メーカーとして何を求めていくのかが、改めて問われている時代だと思った」。

市場の将来を懸念する声もあるが、サッポロビールは「新しいお酒のある豊かな社会と生活」に貢献するという「いちばん星マーケティング」を掲げる。これを野瀬氏は「無限の可能性がある酒の未来を開拓していくこと」と位置付け、「そこを皆で信じて進むことこそが、私がまずやりたいこと」と話す。

また、「今の業績、利益の体質にはまったく満足していない」といい、収益力の強化も掲げ、改革を進めていく必要を説く。

ビール強化を掲げた活動を続け、「黒ラベル」「ヱビスビール」の成長準備を進めてきた。昨年10月のビール減税もあり、家庭用では想定以上の成果を挙げた。「黒ラベル」の缶は絶好調で、1~11月で前年実績を大幅に上回った。「ヱビス」缶も同様だ。また飲食店での酒類提供が再開された影響もあり、業務用の出荷も前年を超えている。

厳しい環境下でも新しい発見があった。家で飲む機会が増え、20~30代で新しく両ブランドに接した機会が前年比70%増えた(1~6月)。若い人はビールを飲まないと言われるが、「ビールを家で飲み、美味しいと気づいた」とみる。最近では巣ごもりもあり「準備を重ねてきたものが、結果的に後押しになった」と胸を張る。

プレミアムビールへの考え方が変わってきたことにも注目。30年前は単一の商品を作って大量販売していたが「そんな時代ではなく、お客様が選ぶ時代」となり、「共感を得られるものを、どれだけ提供できるか」をポイントとして挙げる。時代が変わる際の「ヱビス」の意味について議論を重ね、「ちょっと贅沢」から「一人一人の気持ちに寄り添うビール」に変わらなければならないと力説。プレミアムは相対的な価値ではなく、「自分にとって意味があるかどうか」だとする。

今年は「ヱビス」のブランドコンセプトを「color your time」に変えた。時間の過ごし方が変わっていく今、「それぞれの時間をどう彩るか、その提案をできるのがプレミアムビールだ」といい、「それを可能にする多様な品ぞろえが『ヱビス』の強み。そこをバリューに変えていく」。

「美味しいビールを飲食店で味わうことが何よりも大事。それが缶にもつながる」として業務用も重視。苦しい状況にある飲食店への公からの支援の必要性も訴える。

今後はイノベーションと海外展開に注力。また人事でも評価制度を含めた改革を考える。適材適所の「適所」を作ることも仕事だとして、社員のやる気を引き出したい考えだ。

厳しい市場だが「新しい提案で消費者に認めていただき、市場を活性化させることが使命だと思っている」。