パン粉、大手メディアが報じない苦境 コロナで減る出番 原料高騰が追い討ち コスト転嫁へ正念場

食品業界で値上げが相次いでいる。中でも、この秋の麦価改定で19%増と大幅に引き上げられた小麦、今年11月まで4回の値上げを行った食用油はさまざまな食品の原料に使用されるため、影響は広範囲に及ぶ。その両方を使用するパン粉業界も対応を迫られている。

小麦粉を原料とする食材の中でも、主食であるパンや麺類、あるいは菓子などに比べると、揚げ物の衣に使われることの多いパン粉は地味な存在だ。

そのため、大手メディアが食品の値上げについて報じても、パン粉にスポットが当てられることはほとんどない。市場の9割近くは業務用で占められ、パンや麺のようにスーパーで家庭用商品を購入する機会が少ないこともその一因だろう。

今年1-9月のパン粉生産量は前年に比べ2.4%増加した。昨年、コロナ禍の影響で業務用の外食や惣菜向けが落ち込み、今年はその反動が表れた格好だ。家庭用が3%減少した一方で、業務用は3.2%伸びた。だが、それを実感する声はあまり聞こえてこない。

パン粉業界は、ボリュームゾーンの業務用を地方に点在する中小メーカーが担う構図となっている。昨年はGo Toトラベルなどにより一時的に外食や観光業が活性化することもあったが、今年は緊急事態宣言が解除された10月まで、こうした需要の回復はほぼ見られなかった。地方においてはイベントや祭りの自粛が続き、ゴールデンウイークと盆の帰省もなかったことから、家庭内でのハレの日需要も失われた。

さらにリモートワークの定着も逆風となった。「弁当や外食でエビフライやコロッケを食べることはあっても、家にいるとレトルトやインスタント食品で済ませてしまうので、揚げ物の出番がそれだけ少なくなる」とパン粉メーカーの社長は嘆く。

今後の需要回復についてはコロナ禍によるところが大きく不透明だが、それとは関係なく原料高が避けられない事実であるのは確かだ。特に今回は「上げ幅が大きいだけに、できるだけ早く対応しなければならない」と西日本パン粉協同組合の小谷一夫理事長は危機感を示す。加えて、燃料高騰に伴う物流費や、最低賃金引き上げによる人件費のアップも無視できない。

今年春の麦価は5.5%引き上げられたが、価格転嫁できなかったところも多い。「春に上げなかったので、今回はお願いしやすい」「上げ幅が大きいので理解が得られやすいのでは」といった前向きな姿勢も見られる。

その一方で、家庭用を扱う小売業からは「減量・価格据え置き」の実質値上げを要求する声も聞こえてくる。だが、原料高は来年春以降も続くとの見方が強く、そのたびに容量を変更するのは現実的でない。

いずれにしろ、企業の安定経営と業界の存続・発展のためにも、今回のコスト高を適正に転嫁できるか正念場となる。