理解乏しい片頭痛の苦しみ 解消へ新治療法 大塚製薬

「先生、頭が痛いんです」と訴えると、内科医は「風邪」、整形外科医は「肩こり」、産婦人科医は「更年期障害もしくは月経前緊張症」、眼科は「ドライアイ」と返す――。

。7月12日、大塚製薬プレスセミナーで講演した湘南慶育病院の寺山靖夫副院長・脳神経センター長は、片頭痛への理解が十分なされていないことの一例として、過去実施したアンケート調査を紹介した。

片頭痛は有病率の高い神経疾患で、国内では約840万人の患者がいると言われており、女性の有病率は男性の3倍で、30代女性の有病率は約20%に達するとされる。一般的にその症状は、心拍に同期した頭痛(拍動性頭痛)が週2回から月1回の頻度で起こり、4~72時間持続する。

2005年に出された京都頭痛宣言によると、片頭痛は仕事や日常生活に支障をきたす主要疾患のトップ20に入っており、女性では12番目の疾患とした。

さらに、毎日60万人の日本人が苦痛を感じ人間らしい生活が妨げられ、頭痛による生産性の低下で毎年2千880億円の経済的損失をもたらしていると推定する。

このように日常生活への支障が大きい一方、その苦しみが理解されず、休みを取りづらい、家事や仕事がはかどらないといった悩みを抱えている人が多いという。「『ただの頭痛』と患者さんだけでなく多くの医療関係者も疾患という認識を持っていないことが非常に社会問題になっている」と指摘する。

京都頭痛宣言では、この無理解から、診療や治療に満足できず59%(108万人)もの患者が受診を止めた点にも触れている。

寺山氏は、患者の声から片頭痛の一番の苦痛に不安感を挙げる。「患者さんのつぶやきから推し量ると、次にくる片頭痛や頭痛発作に怯え、頭痛によくないことを避けながら、毎日、毎日、慎重に生きることを考える。つまり、非常に慎ましく、怯えた生活をされている姿が浮き彫りになった」と語る。

片頭痛のメカニズムはこうだ。カラダのリズム・バランスを調節し、三叉神経をコントロールしている脳セロトニンが何らかの原因で減少すると、コントロールされていた三叉神経が興奮し、三叉神経から脳の血管へ片頭痛の原因物質であるCGRPを放出し血管が拡張する。次に、拡張した血管からたんぱく(血漿蛋白)が漏出して炎症を起こす――。

続いて講演したシナプス埼玉精神神経センター・埼玉国際頭痛センターの坂井文彦センター長は、前記のメカニズムを紹介した上で「CGRPが放出された後に、CGRPをつかまえて無力化し、ブロックする新薬(抗CGRP抗体)が開発された」ことを明らかにする。

その効果について、従来の急性期治療薬は「血中にとどまる時間(半減期)がだいたい2時間、長くて5時間」であるのに対し、新薬は「半減期が30日なので月1回の皮下注射で1か月以上の予防効果が期待できる」と説明する。

50歳以下で片頭痛を発症した18~70歳の男女(日本人・韓国人n=357)を対象にプラセボ群(n=117)、12週間に1回の新薬皮下投与群(n=121)、4週間に1回の新薬皮下投与群(n=121)に分けて臨床試験を行ったところ、両投与群で1か月(28日)当たりの片頭痛日数が4日間、片頭痛発作が50%減少した。

「50%減ることの意味を患者さんにうかがってみると「頭痛が半減し人生が戻ってきた」「頭痛が良くなって初めて自分の頭痛がどれだけ辛いものだったか改めて分かった」といった声が聞かれた」という。

反復性片頭痛患者と慢性片頭痛患者の両方で同様の効果の持続が見られたとし、「頭痛医療の進歩にとって千載一遇のチャンスがきたと思っている」と期待を寄せる。