効率や便利さの追求で見落とされがちなもの それに光を当てる伊藤園のユニークなデジタル戦略とは?〈前編〉

お茶をいれる急須は、突然の来客など“急な用に応じて須(もち)いる”が語源。

急須の誕生から200年以上経った現在。お茶の提供にはペットボトルやティーバッグが誕生し、急須は逆に“手間暇と時間がかかる”ものとなってしまった。

伊藤園のデジタル戦略は、変化のスピードが早まり効率や利便性がより求められる現代において、“急須でお茶をいれる”といった見落とされがちなことに光を当てて価値を見出し、それを人の輪で広めていくことに力点をおいている。

「実家が佐賀県で嬉野(うれしの)茶が身近にあり、家族との団らんで当たり前のように飲んでいた。急須でいれて飲むお茶は、なんだかホッと心を落ち着けてくれる。そのような体験が次の世代でなくなってしまうとしたら、とても残念」との思いからお茶の普及活動に積極的に取り組むのは販売促進部の食育チームに所属する西原佐栄さん。

伊藤園は5月1日から伊藤園ティーテイスター(社内検定資格保有者)による「#IeTimeOEN(家タイム応援)」プロジェクトを展開。ティーテイスターの資格を持つ社員が日々様々な切り口でお茶の楽しみ方をツイッターなどのSNSで発信し、西原さんはその急先鋒として活躍している。

西原さんは、湖畔のキャンプ場を舞台にアウトドアグッズを用いてほうじ茶ラテのつくり方を動画で紹介。緒に就いたばかりのプロジェクトの中でとりわけ多くの再生回数を記録した。

「動画撮影・発信は不慣れだったが、SNSを参考に、業務で学んだプレゼンテーションのセオリーを生かして取り組んだ。面白そう、試してみたい!と感じてもらうためには、自分自身が楽しむこともコツのひとつ。スマホ・PC画面に向かって一方的に語ることへの慣れは必要だが、ぜひ多くの社員に挑戦してもらいたい」と呼びかける。

現在約2200人のティーテイスターのうち200人弱が同プロジェクトに加わり、その数は着実に増えつつあるという。

西原さんの活動は動画投稿に留まらずデジタルイベントも積極的に企画する。

取材に応じる西原さん(伊藤園)
取材に応じる西原さん(伊藤園)

10月1日の「日本茶の日」には、「十五夜に楽しむ 緑茶モクテルで乾杯!」と題したイベントをZoomで開催した。

「夜の8時から9時にかけて、東京の増上寺・大阪のあべのハルカス・大分の茶園を中継でつなぎ、お月見しながら水出しの緑茶のいれ方と、それをアレンジした、モクテルを紹介した。後日、インスタグラムで“職場や身近な人に教えたら喜ばれた” “どんなお茶でも水出しができることを知った”といったお声を目にして嬉しく思った」と振り返る。

今後も「お茶が身近にない世代にも興味をもってもらえる動画や企画を考えていきたいティーテイスターからのお茶の楽しみ方の提案が、お客様の豊かな食生活につながっていくよう皆で取り組んでいきたい」と意欲をのぞかせる。