福島・東北復興に貢献 アイリスオーヤマ食品事業じわり拡大 その突破口はコメの鮮度と1年の賞味期限にあった

アイリスオーヤマのグループ会社・アイリスフーズは、東日本大震災の復興支援を契機に設立された食品事業会社で、現在、精米・パックごはん(包装米飯)・切りもち・レトルト食品・飲料水など約500品の食品アイテムを取り揃える。

被災した福島・東北の農家の支援につながるコメ商品と防災の観点を軸足にラインアップし、被災した東北エリアの支援とともに豊かな食文化を創造すべく、精米事業を行う舞台アグリイノベーション設立と同じ年の2013年に新設された。

昨年は、期せずして発生した新型コロナウイルスによる備蓄意識と内食需要の高まりでパックごはんが好調に推移。これが牽引して食品事業の売上高は前年比33%増の200億円に達した。

今年は、災害時の断水などに貢献すべく飲料水事業に参入し、食品事業会社のアイリスフーズが(株)ゆのたに(本社:新潟県魚沼市)からレトルト食品、缶詰とそれらの製造及び販売に関する事業を譲り受けてレトルト食品を本格展開し、防災意識の高まりに対応する。

「富士山の天然水」(左)と「富士山の強炭酸水」(アイリスフーズ)
「富士山の天然水」(左)と「富士山の強炭酸水」(アイリスフーズ)

飲料水は富士小山工場(静岡県駿東郡小山町)で製造した「富士山の天然水」と「富士山の強炭酸水」を販売している。

取材に応じたアイリスフーズの山田次郎社長は、ゆのたにから譲受したレトルト食品と缶詰について「これまで賞味期限3年以上の価値ある商品しか売られていなかったが、一般販売向けに内食需要に対応した惣菜などを今後発売していきたい。賞味期限を延長することで値頃感も出していきたい」と説明する。

アイリスブランドが炊飯器などの家電製品やマスクの国内増産対応で認知を高めていることを追い風に、食品事業も勢いづいている。

13年、異業種から精米を皮切りに食品事業へ参入し、わずか10年足らずでなぜ急成長を遂げたのか。その理由はお米の鮮度にあった。

アイリスオーヤマのパックごはん各種
アイリスオーヤマのパックごはん各種

最初に発売したのは、「アイリスの生鮮米」と称する従来にない3合の小分けパックの商品。低温製法で鮮度と賞味期限1年を実現した価値ある商品だが、スーパーや量販店にすんなり導入されることはなかった。

「アイリスオーヤマとかねてから取引関係にあるホームセンター様やドラッグストア様には入れていただくことはできたが、お米の一番の販路であるスーパーとはネットワークがなく最初の1年間は苦労した」と振り返る。

しばらくして、コンビニに採用されたことでその突破口を開くことに成功する。

低温製法とは、契約農家から仕入れた玄米を低温保管し、低温で精米することで精米時の摩擦熱を減らしコメの旨味成分を保持、そのコメを酸化防止剤とともに密閉状態で梱包する製法。これにより、精米時のおいしさと鮮度、そして賞味期限1年を可能とし、これらの特長がコンビニオーナーに受け入れられた。

「通常のお米の場合、フランチャイズ経営のコンビニオーナー様は入荷1ヶ月で値引き販売あるいは廃棄を余儀なくされる。ロス防止の観点から、コンビニ本部がオーナーに案内して下さったことで導入店舗が広がったことが大きい。コンビニオーナー様は酒屋かお米屋ご出身の方も多く、お米に愛着を抱いて下さっていたようにも感じられる」と説明する。

コンビニで目にする機会を増やしたことで、スーパーのバイヤーにも認知されるようになりスーパーや量販店でも採用されるようになったという。

その後は関係性を深めるべく品揃えを拡充。

アイリスブランドの炊飯器
アイリスブランドの炊飯器

「お米を軸足に、切りもち、パックごはん、スープリゾットという順にお米の周辺商品を強化し導入先が増えていった」と述べる。

20年には、レトルトカレー、フリーズドライ食品(雑炊)、フリーズドライ味噌汁も発売した。

今後は、低温製法米の配荷拡大と新商品の開発に取り組む。

新商品は昨年から好調に推移しているスープリゾット商品をはじめ、防災食や健康志向に対応した商品を強化していく。「防災食はアルファ化米への参入も検討していく。健康志向に対しては『低温製法のおいしいごはん 発芽玄米ごはん』などを強化していく」との考えを明らかにする。

パックごはんと飲料水でTVCMを放映開始しコミュニケーションにも力を入れる。

スーパー、量販店の店頭では、アイリスオーヤマの炊飯器・電気圧力鍋・サーキュレーター・布団乾燥機などとの相乗効果も見込む。

アイリスフーズの山田次郎社長
アイリスフーズの山田次郎社長

海外にもアプローチしていく。「中国へは規制のためまだ輸出できないが、北米市場に向けて動いている」という。

アイリスオーヤマを中核とするアイリスグループ(非上場)の2020年度決算(12月)は、売上高が前年比138%の6900億円、経常利益が218%の621億円となり売上高・経常利益ともに過去最高に達した。

アイリスグループでは21年度に8500億円、22年度に1兆500億円の売上高を目標に掲げており、山田社長は「グループの成長にキャッチアップすべくアイリスフーズも発展させていく。事業を拡大させていくことが、雇用を生み地域経済を活性化させ震災復興に貢献できるものと信じている」と思いを新たにする。