食品卸 新しい流通様式構築へ加速するデジタル対応 連載・アンダーコロナキッチン第3章「新たなニーズ」〈1〉

新型コロナウイルス感染症は、食品流通業界にも大きな影響を与えた。これまでの生活様式を根本から変え、数年かけて進むものと見られていた社会構造変化がこの1年で一気に進んだ。食品卸の現場では急激な需要変化への対応と感染対策を徹底しながら、食のサプライチェーンを途切れさせることなく安定供給を維持するとともに、業務改善や営業現場でのデジタル活用の取り組みが加速している。

食品卸業界にとって2021年は「大きく変化した生活様式、社会構造を踏まえつつ、新たな価値を創造し、将来の発展にスタートする年となる」(日本加工食品卸協会・國分晃会長)。コロナ禍で変化する事業環境に対応し、新たな流通様式を構築するとともに、コロナ前からの課題であった「持続可能な物流の構築」がサプライチェーン全体の避けて通れないテーマとなっている。

昨年春、全国のスーパー各社のPOS販売実績は2月最終週の113%超を境に緊急事態宣言が発令された4月1週目には117%超のピークを記録した。2か月以上にわたって前年比二ケタ増という異常事態が続く中、卸の現場にはそれをはるかに上回る爆発的なオーダーが押し寄せた。メーカーの欠品も相次ぐ中、物流現場の人手確保と3密回避を図りながらの作業は困難を極め、出荷調整にも時間がかかり、ピーク時には物流センターでの納品トラックの長時間待機も発生した。

ある卸の物流担当者は「コロナ以前から物流センターへのトラック受付システム導入を進めていたが、それがなかったらもっとひどい状況になっていた」と振り返る。こうした中で、日食協が主体となって進めてきたトラック入荷・受付予約システム「N-Torus」は、19年3月の導入開始以来、直近(20年12月時点)では17都道府県・14社69拠点にまで導入が拡大。2024年にはトラックドライバーの時間外労働時間の上限規制が強化され、積み下ろしなどの付帯業務や荷待ち時間の長い加工食品物流の業務改善が喫緊の課題となる中で、コロナ禍を契機にデジタル技術を活用したオペレーション改善の取り組みが加速している。

大手食品卸各社は以前から、DX(デジタルトランスフォーメーション)が不可欠との認識で、日々の業務改善などの取り組みを進めてきたが、コロナ禍により、その重要性が浮き彫りになったともいえる。受発注業務のペーパーレス化などテレワークへの対応や、RPAやロボティクス技術、AI活用による業務の効率化、物流センターにおける伝票受け渡しの非接触化、入退場の履歴管理など、コロナをきっかけにさまざまな見直しが進められている。

また、営業現場でもデジタル活用の動きが広がっている。この1年間、コロナ禍でリアルの展示会や商談会が中止となり、流通の現場では新商品や地域商材の発掘、売場企画などの提案機会が失われている。こうした中で、小売業・メーカーから商談の場を求めるニーズは根強く、大手食品卸各社はWeb展示会などの企画充実を図っている。

小売業に対する販促支援でもデジタルサイネージを活用した売場提案や、スーパー各社のアプリ開発支援をはじめ、非接触型のデジタルギフトやECサイトでの地域商材の販売支援などの取り組みも活発化している。

コロナをきっかけに、食品流通業界におけるデジタル化の流れはさらに加速し、持続可能な新しい流通様式の構築と新たな需要創造に向けた取り組みが進んでいる。