五輪霧中 歴史に学ぶとき

五輪チケットに注文殺到、抽選結果に悲喜こもごも…との話題が報じられた19年夏。「五輪夢中」だった世相は、いまや「五輪霧中」の様相だ。

▼感染拡大を受け五輪組織委員が言及した延期論が「とんでもない」(森喜朗会長)と非難されたのが昨年3月。ほどなく延期が決まる。原発汚染水は「アンダーコントロール」だなどと必死で招致した五輪の大義名分も、「復興」から「コロナ克服の証」に変わった。

▼昨年末、中止の世論が高まっていたGo To事業は強行の挙句、感染急拡大であえなく停止に。後手への批判に「いちいちケチをつけるものじゃない」(自民党・二階氏)との発言まで平気で飛び出す。緊急事態宣言の解除時期が見えない今も「夏の大会開催に完全に注力」(組織委)しているそうだ。

▼場当たり的な対応を重ねて開催を目指してきた、五輪の本来の目的とは何だろう。戦史の名著『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(戸部良一ほか)が指摘したのは「あいまいな戦略目的」「短期決戦の思考」「空気の支配」といった、旧日本軍に特有の気質だった。歴史に学ぶべきである。