コロナ禍でも「パン粉だけ売れ残った」NHK番組は本当? 実態は

パン粉は、構成比の9割を占める業務用が市場を牽引してきた。しかし、今年は内食化により家庭用が伸長する一方、業務用は外食や給食チャネル、惣菜ユーザーなどの低迷で苦戦。ただ、主な用途が手間のかかる揚げ物であるため、家庭向けの需要が今後も継続して伸びるとは考えにくく、新しい用途の提案が不可欠だ。業務用も主力である冷食や惣菜などの加工ユーザーに向け、ウイズコロナ時代の変化を見据えた商品提案が求められている。

10月半ば、NHKの番組でパン粉が取り上げられた。食品の中でも地味な印象のあるパン粉だが、日本で独自の進化を遂げた歴史や新しい使い方、食べ方にスポットを当てて紹介していた。

番組中、スーパーの棚に置かれたパン粉を映す場面があった。小麦粉やミックス粉が売場から跡形もなく消えた中、パン粉だけが売れ残ったような印象を与える映像だったが、実情は少々異なる。緊急事態宣言が発令され内食需要が高まった4月と5月、家庭用パン粉の生産量はいずれも前年に比べ2割以上増加した。

他の家庭用食品と同様、パン粉にもコロナ禍による特需があった。それでもプレミックス粉のように欠品が目立たなかったのには理由がある。「パン粉は業務用の構成比が高いので、たとえ家庭用の需要が倍になったとしても製造は対応できる」。西日本パン粉協同組合の小谷一夫理事長は説明する。

2019年のパン粉生産量(全国パン粉工業協同組合連合会調べ)は16万1千tで、このうち業務用は14万3千t、構成比は89%と9割に迫る。10年前(09年)の生産量は15万tで、このうち業務用は12万9千t、構成比は85.9%なので、10年間で3ポイント以上、業務用の比率が高まったことになる。

その理由は明確で、惣菜や冷食の市場が拡大したのと同じく、女性の社会進出や高齢化の進行により、家庭で調理する機会が減ったためだ。とりわけ調理だけでなく準備と片付けに手間のかかる揚げ物は、時短志向の中で敬遠されやすい。

だが、今年は新型コロナで流れが変わった。1-9月のパン粉生産量は家庭用が7.5%増の一方、業務用は6.5%のマイナスに。特に家庭用が2割以上伸長した4月、5月に業務用はいずれも二ケタ減となった。結果、業務用の比率は9月までの累計で86.5%に後退した。

パン粉業界は地方に点在する中小メーカーや問屋が多く、その得意先はほとんどが業務筋だ。ホテルや飲食店が低迷し、給食も一時ストップした。夏には地域のイベントや祭りもなくなり、ビアガーデンも閉店。帰省者も減って行楽・観光需要も失われた。

また、家庭内調理の機会が増えたことで惣菜が苦戦。もう一つの加工向けの柱である冷食はメーカーが主力品の生産に追われ、新製品開発が遅れたことがパン粉の生産にも影響した。

構成比の高い業務用が低迷し、パン粉全体の生産量も4.5%減った。2012年以降は業務用が牽引し6年連続で成長を続けていたが、一昨年に0.5%の減少に転じ、昨年も1.2%下回るなど頭打ちになっていた。今年は8月にようやく下げ止まったが、それまでの落ち込みが大きく通年で取り戻すのは容易ではない。

家庭用の需要は確かに増えたが、昔のように家庭で頻繁に揚げ物をするのが定着するとは考えにくい。そのためにもパン粉の新たな使い方を提示することが必要となる。パン粉大手・旭トラストフーズの金田朋宏社長は「余ったパン粉を使う提案ではなく、改めて購入するためのきっかけとなるようなメニューの訴求が重要」と強調する。

他方、主軸である業務用に関しても新たな提案が求められている。惣菜売場ではバイキングの販売形式が敬遠されて個包装が増えているため、経時変化に強いパン粉のニーズが強まっている。また、地方では大手の下請けを担っていた冷食メーカーが、不安定な大手の動向に左右されないよう独自商品を開発するケースが増えており、新たな機能や特徴を持つパン粉への引き合いが増えている。