食に生きる人々の底力

日常生活のなか、食に対してぞんざいになった時、読み返してリセットするようにしている本が数冊ある。10年ほど前に評判を呼んだ「英国一家日本を食べる」も、その一冊。英国のフードジャーナリストが一家4人で100日間かけ日本を巡り、ひたすら食べ散らかした記録だ。

▼前半は子供たちの日本への反応などが笑わせるが、徐々に日本料理への切り込みとエクスポージャーが深くなってくると読み手も襟を正さざるを得なくなる。この本の本当の面白さは、日本に生まれ育った人間にも改めて、日本料理やその素材、酒など、それらを提供するため、ひたすら職人的情熱を傾け続ける多くの人々を伝えていることなのだろう。

▼日頃意識の奥底に沈潜していた、数限りない印象深い食事と、それを共有した人々の想い出が浮かび上がってくるのと同時に、食に生きる人々の底力を強く感じる。コロナ禍では名店の廃業も相次いでいる。

▼外食産業が惨憺たる有様になっている現在“new normal”なんて言葉で片付けては済まされない文化があるのではないか。