そうめんで新しい体験を 価値・コト提案の発信に力 マル勝高田商店 高田勝一社長

そうめん発祥地・三輪(奈良県桜井市)の地元大手メーカーの一つマル勝高田商店では、手延べそうめんの普及拡大に取り組む。3月1日には、そうめんの新しい価値提供を目指す、物販兼飲食店舗「てのべたかだや」をグランドオープンした。高田勝一社長に、その想いや狙いについて聞いた。

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――店舗コンセプトは。

高田 伝統食のそうめんを通して、新しい価値やコト提案ができる拠点「そうめん・ラボ」を目指す。商品や食事を提供するのではなく、いろんなことを発信して来店客に「エクスペリエンス(経験・体験)」を提供したい。

物販では料理や来店客の好みで買ってもらえるように、そうめん売りの原点である「測り売り」を採用。手延べそうめんを含む13種類の麺を用意し、2束ずつ販売。家族の好みや用途によって、好きなものを選んでもらうことが可能。今後は限定品も充実させる。

飲食店舗では、細さの異なる麺2種類と、温・冷だし、具材や薬味を変えて8種類を用意し、自由な組み合わせを楽しめる。韓国チゲ風など各国各地のメニューも採り入れ、店で世界旅行、国内旅行が楽しめるような限定メニューも企画中だ。

――開発の経緯を。

高田 そうめんの価値とは?と考えると、これまでは“簡便さ”“涼味”、贈答用は“儀礼を伝える手段”だった。しかし、時代が変化し日常も日々変わりつつある中で、そうめんは何も変わっていない。変わらないといけないと言いながら、同じことを繰り返してきた。

店舗ではそうめんだからこそできる価値提案を考えた。手延べでしか出せない、のどこしやコシ、また麺が細く繊細であり、うどんやそば、中華そばと比べて、合わせるだし本来の味を邪魔せずに楽しんでもらえる。機械製のうどんやそうめんが近年、多加水製法を取り入れて進化している。茹でたては手延べ麺とそれほど差はないが、温かいつゆに合わせた時に、その差は歴然に表れる。

1日にオープンした「てのべたかだや」(マル勝高田商店)
1日にオープンした「てのべたかだや」(マル勝高田商店)

そうめんを普及拡大させようと、サラダそうめんなどを提案しても、それはただマカロニやうどんの代替品。それよりも例えば鍋で良いだしが出たので、しめの雑炊の代わりに手延べそうめんを入れてみようとか、他の麺ではできない楽しみ方、家庭で活用するヒントとして気づいてもらえる機会づくりを店舗で行いたい。

出店を機に、商品を含めて物事を一つひとつ見直し実行に移そうと決意した。家庭用で長年親しまれている「三輪の神糸」のパッケージを、笹やせせらぎの夏を連想させるイメージから、通年に対応できるデザインや原料のこだわりを表現した内容に刷新した。

――手延べそうめんの可能性とは。

高田 常備食に冷凍うどんをストックする家庭も多いかと思うが、賞味期限が約3年の手延べそうめんはもともと常備食。しかし数年前に西日本で災害があった際、非常食として需要は伸びなかった。要因はそうめんは冷やして食べるもの、水を多量に使うという固定概念が消費者にあるから。温かくして食べる、ゆで汁にそのまま味付けできることがもっと浸透すれば、非常食として広がる可能性は高い。涼味、簡便だけでなく、他の角度から見ればポテンシャルはまだまだ高い。