訪日外国人 4千万人時代 転機迎えた食品、消費形態

7か月後に迫った東京オリンピック・パラリンピックをきっかけに訪日外国人の増加が見込まれる2020年。これを契機に日本の食品や外食、それに消費形態や企業の取り組みに大きな転機が訪れそうだ。五輪のテーマの一つである「多様化と調和」は、多彩な形で食品にも再現され、新たな食文化を形成。その根底として、企業のSDGs(持続可能な開発目標)対応も求められている。

今年の訪日外国人は韓国からの減少もあったが全体では昨年を上回ることが確実で、オリ・パラが開かれる来年は4千万人が見込まれている。一時期陰りが見えたインバウンドも、モノ消費から滞在型のコト消費に形を変えて増加。食品企業も対応を急いでいる。

ラグビーW杯開催時には多くの人が日本を訪れ、試合だけでなくキャンプ地や観光地でもさまざまな交流があり、新たな需要が発生した。オリ・パラも開催地の東京、札幌だけでなく、人の流れが全国に分散し、五輪スポンサー企業以外にも消費が発生することは間違いない。一方で全国の自治体がキャンプ地に名乗りを上げており、スポーツで町おこしを狙う自治体が増えている。

主にヨーロッパから広まった「エシカル(倫理的な、道徳上の)消費」。社会的課題に取り組む事業者を支援し、環境への負荷低減や社会貢献を重視した商品やサービスに沿った消費形態などを指し、来年は新たな消費基準として加速しそうだ。途上国商品を適正価格で購入するフェアトレードや、コーヒーやカカオ、バナナを対象に自然環境や労働環境を支える仕組みのレインフォレスト・アライアンスなどが一般的だが、ロハスやオーガニック、ヴィーガン、リサイクル、地産地消を含める考えもある。

外国人の宿泊が多いホテルでは、分解性ストローや認証ワイン、フェアトレード認証コーヒーなどを導入して来客を促す一方、キーコーヒーやUCC上島珈琲などは認証コーヒーの展開により家庭用、業務用市場に対応する企業もある。

外国人の中には肉や魚だけでなく、卵や乳製品など動物性の食品を食べない菜食主義者の「ヴィーガン」が増えており、植物性食品を扱うレストランも増えそうだ。ハラルフードの飲食店は既に広がっているが、ヴィーガンやベジタリアン対応で客を呼び込もうとする店も増えそうだ。こうした店はSNSで瞬時に情報が拡散し、外国人で賑わうはずだ。

カゴメは、ヴィーガンやベジタリアン向けメニューに対応するため「野菜だし」を発売。五輪を前にホテルやレストランでの需要が高まっている。マルコメもベジタリアンやヴィーガン向け業務用で提案。ひかり味噌もヴィーガン対応のみそ汁を展開している。

大豆など植物性たんぱく質を使った代替肉としての「大豆ミート」が世界的な広がりを見せており、日本でも次々と新製品が発売されている。欧米では大手ファストフードも参入。将来的には食肉市場の25%を占める予測もあり、低カロリー、低脂質以外に、食料不足の解消になるためSDGsの観点からも有望視されている。

大豆ミートをはじめとした植物性素材で圧倒的な存在感を発揮している不二製油のほか、大塚食品の「ゼロミート」や森永製菓の玄米入り大豆ミート「ゼンミート」、マルコメ「ソイミート大豆のお肉」などが発売されている。

企業対応もSDGs重視の考えが浸透しそうだ。飢餓や気候変動、エネルギー、食品ロス、環境など持続可能な社会の実現のため、17のゴールと169のターゲットから構成されており、食品業界に関連が深い食品ロスやプラスチック問題は、具体的な施策が動き出した。

プラスチック問題は、全国清涼飲料連合会が「プラスチック資源循環宣言」を掲げる中で2030年度までにPETボトルの100%有効利用を実現するため短・中・長期で取り組みの方向性を示し、企業別の取り組みも進んでいる。

「五輪は食文化交流の場」 味の素・西井社長

味の素の西井孝明社長は、食文化交流の場としてのオリ・パラについて次の通り語った。

オリ・パラは世界のスポーツ交流の場であるとともに食文化交流の場でもある。来日客が日本食を食べて母国に持ち帰れば、それぞれの国に合った日本食が生まれる。日本の伝統的な和食はキチンとした価値を持っているが、日本の食事が海外に出て行った時、その国に合った食にアレンジされる。それは素晴らしいことだ。

日本のギョウザを初めて食べた外国人は、ヴィーガンの人は野菜ギョウザを考えるし、イスラムの人も豚肉やアルコールを使わずに鶏肉で調理。ギョウザの具をデザートに変え、りんごのジャムのような食材を加え、揚げるとおいしいホットデザートになる。

世界中のシェフは日本の発酵食品やダシも研究している。日本ではダシと言えば昆布やかつお節、干し椎茸などだが、海外では肉を干してダシをとる国もある。発酵食品をつくるのにナッツを発酵させるアレンジもある。