中四国スーパー、出店戦略見直し、事業継承・M&Aに軸足 2強の勢力図に影響か

中四国を基盤とする大手スーパーが今後の出店戦略を見直す。人口の減少やドラッグストアなどとの競争により経営が困難になっているSMの新規出店を見直す一方、厳しい経営環境を背景に撤退する地域スーパーの事業継承やM&Aに注力する構えだ。

イズミは1年半前に発表した中期計画を下方修正した。当初3年で40店舗の出店を計画していたが、15店に縮小。三家本達也専務は「思っていた以上に環境が変わり、ボリュームを追い成長を加速するやり方が適切ではなくなった」と理由を説明する。

年平均200億円という投資規模は変わらないが、このうち約6割を新規出店に充てるという当初の考えを見直し、既存店の活性化とM&Aに等分に投資する方針に変える。「GMSは引き続き積極的に出店するが、SMについては物件を厳選する」(三家本専務)としている。

フジの山口普社長も新規出店について「前向きには考えるが、以前のように次々出店するのが得策とは言えない」との考えを示す。同社の新設店舗はスクラップ&ビルドを除けば前期が1店、今期の計画も2店にとどまる。

両社が出店を見直す背景には複数の理由がある。一番の要因として挙げられるのが、マーケットの縮小だ。フジの地盤である四国地方は、全国的に見ても人口の減少が急速に進行しているエリア。同社は昨年10月、イオンとの資本業務提携を発表したが、それは縮小する市場において、単独で事業を継続するのが困難と判断したためである。山口社長は「新店を出した時が、そのマーケットの人口のピークというエリアが少なからずある」との認識を示す。当然、こうした市場がその後、拡大するとは考えられない。

別の大きな理由が出店コストの高騰、そして小売間競争の激化だ。これらは今に始まったことではないが、建築費は上昇を続けており、仮に出店したとしても激しい競争にさらされ、投資回収はより困難になっている。

フジによると坪当たりの建築コストは、この数年で1.5倍に高まったという。初期投資が増えた分、それを今までと同じ期間で回収するのは難しい。ましてや、スーパーが出店を抑制している間にも、出店コストが比較的安くて済むドラッグストアはペースを緩めることなく出店を続けており、競争環境はさらに厳しさを増している。

イズミの三家本専務は「従来は小さい店舗ならば初年度、もしくは2年目で黒字化が可能だった。今は3、4年かかり、黒字になってもわずかな利益しか出ない」と現状を指摘。「シェアを伸ばすために、あえて競合がひしめく場所に出店する必要はない」と強調する。

SMの出店を抑制する一方、イズミ、フジの両社が前向きなのが店舗の継承とM&Aだ。イズミは前期、西友から大型店2店を引き継ぎ、ゆめタウン下松(山口県)、同姫路(兵庫県)としてそれぞれ開業した。今年夏には、イトーヨーカ堂から継承した店をゆめタウン福山(広島県)として全館オープンする。「西友からの物件がうまくいったので、これをモデルに今後も話があれば積極的に取組む」(三家本専務)。

フジは今年3月、全店舗を閉鎖した広島県呉市のSM、三和ストアーから3店舗を譲受。子会社のフジマートが5月に「ピュアークック」として営業を再開する。

また、M&Aに関してイズミは前述の通り、その投資比率を高める方針を明らかにしており、フジも「連携型のM&Aがあれば前向きに進めていく」(山口社長)との考えだ。

中四国地方ではマックスバリュ西日本がイオンのSM事業再編の下、今期からマルナカ、山陽マルナカと統合した。そのマックスバリュ西日本も昨年、広島市の広電ストアからSM5店舗を引き継いでいる。

昨年のフジとイオンの資本提携により“イオンvsイズミ”という構図がより鮮明になった中四国地区。フジとマックスバリュ西日本、そしてイズミが今後、M&Aや事業継承を強化することで、2大勢力の力がより増すものと思われる。