主婦なら一度は憧れる「丁寧な暮らし」。慌ただしい日常の中で、衣食住を見直し手間暇をかけて、ゆったりとした気持ちを取り戻す。
▼ご飯は炊飯ジャーではなく、火加減を見ながら土鍋で炊く。庭やベランダで育てた野菜を使った食事に果実酒は手作り、部屋には花を飾る。ネットでその道のプロが生活を味わい楽しむ様子が紹介され、SNSでは丁寧な暮らしを“模倣”した一般人の投稿で溢れている。
▼そこで描かれる理想の暮らしは、時間に余裕がなければ成り立たない。だが世の中は共働き世帯の増加で、家事に掛ける時間は減る一方。便利なものが売れ、食品では時短調理ができるメニューが人気だ。その生活に慣れつつも、便利な生活を“雑”と思い込み、後ろめたさを感じる。それが「丁寧な暮らし」の流行に繋がっている。
▼無理なく丁寧を実践するコツは、簡略する部分、時間をかける部分を取捨選択することだ。朝に飲むコーヒーは、豆挽きでなくともインスタントで十分だ。短縮して余った時間に、ゆっくり食事を摂ることこそが、丁寧な暮らしではないか。