伊藤園は高まる抹茶需要に対応すべく生産能力を増強する。
「伊藤園 静岡工場」(静岡県牧之原市)の敷地内で2016年6月から稼働している「抹茶工房」を増築して、今秋をめどに、殺菌対応ができるハンマーミル2台(2ライン)を設置する。
これによりハンマーミルは計4台となる。
5月15日、清飲記者会の視察取材会に応じた高橋栄道静岡工場長は「現在の抹茶の生産目標が年間300トン。抹茶とその原料となる碾茶(てんちゃ)には様々な種類があり、なかなか能力を出し切れていないため、あくまで目標としている。秋にハンマーミル2台を追加導入し、さらにハンマーミルそのものに少し改良を加えることで10%程度能力を引き上げ、最大で630トンの生産量を目指していきたい」と意欲を示す。
抹茶の製造において重要なのが殺菌という。
「仕入れた碾茶を粉砕して抹茶にしており、お菓子などの食品加工工場や飲料工場に出荷する際、各工場に微生物を持ち込ませないように殺菌が求められる」と説明する。

抹茶工房では、粉砕前に碾茶を蒸気で殺菌し、分離機で碾茶と蒸気を分離している。殺菌機の生産能力は1時間で100キロ程度。
殺菌後、微生物検査を経た碾茶は粉砕される。
ハンマーミルでは、高速回転するハンマーとライナーにより碾茶を粉砕。粒度の揃った円形に近い粒形や均一な品質の抹茶に仕立てることができ、他の素材との混合しやすく加工用抹茶に適している。
一方、石臼は、碾茶を引きちぎるように粉砕するため、不揃いな粒子径や粒形でほどよい食感と高い泡立ちの抹茶となり、お点前用に適している。
生産能力はハンマーミルが1時間で約40キロ。1ロット(250~280キロ)を8~10時間かけて粉砕するのに対し、石臼は1時間に約20グラム。

抹茶工房は24時間稼働。ハンマーミルは現在2台あり、1日に6ロット程度の抹茶を生産する。
ハンマーミルで粉砕された抹茶は、振動篩と言われるふるいにかけられタンクに投入され低温保管される。タンクは4本あり、1本に70キロの抹茶を入れることができ4本で1ロットに対応している。室内は年間通じて25℃・湿度40%で管理されている。
粉砕の工程に入るまでには原料の受入から5、6時間を要するという。
各産地から送られてきた碾茶は、振動篩(ふるい)、風力選別、マグネット選別、合組(複数の碾茶をブレンド)、金属探知機を経て粉砕される。