拡大する大容量タイプ 「脱・改廃」へ調理素材としての利用促進
健康志向やエシカル消費の普及を背景に植物由来の原材料を使ったプラントベースフード(PBF)が台頭し、「植物性ミルク」の需要も伸びている。豆乳やアーモンドミルク、オーツミルク、ライスミルクなどがそれにあたり、ここにきてココナッツミルクやカシューナッツミルクなども登場。新製品や新ブランドも続々開発されている。
今までは豆乳やアーモンドミルクなど、それぞれがマーケットを形成してきたが、PBFブームにより全カテゴリーが活性化し、植物性ミルクとして一つのカテゴリーを形成しそうな気配だ。市場規模では牛乳の足元にも及ばないが、健康意識の高まりから将来的には牛乳代替飲料になるとの予測もある。植物性ミルクは健康効果のほか、世界人口の増加に伴う食糧問題の解決や、CO2排出量の抑制など地球環境の維持にも効果的とされており、エシカル消費の高まりも背景になっている。
植物性ミルクは、その名の通り植物由来のため低脂肪で、かつノンカロリー。カロリーが低いため脂質過剰やダイエット中の人にも食事バランスの改善に役立つ。さらに低脂質もポイント。豆乳には植物性タンパク質やイソフラボン、オーツミルクには植物繊維、ライスミルクには玄米由来のビタミンB群やビタミンEが含まれていることが特徴。牛乳に特徴的なカルシウムはオーツミルクであればほぼカバーできると言われている。
最大カテゴリーの豆乳は過去10年間で生産量は倍以上に膨らみ、2020年には前年比5.3%増の約44万㎘を記録した。今年は巣ごもり需要で伸長した昨年の反動やコンビニ利用者の減少でマイナスだが、日常的に鍋や料理に使ったり、コーヒーの割材として使われるなど新たな習慣が浸透している。
アーモンドミルクも年々拡大を続け、昨年の販売金額は48%増の148億円、販売量は37%増を達成した。大容量タイプと砂糖不使用タイプが市場をけん引し、直接飲用に加え、ここでもコーヒーの割材として飲まれるケースが増えている。
日本では、植物性ミルクの中で比較的日が浅いオーツミルク。しかし乳製品の代替品としてオーツミルクを利用する傾向が世界的に高まっていることが市場の成長を促す主な要因となっている。豆乳、アーモンドミルクに続く「第3の植物性ミルク」とも言われ、昨年1~8月の市場規模は前年同期比で12倍に達し、2025年にはカシューナッツミルクとともに販売量は約3倍になると予測する向きもある。ライスミルクやココナッツミルク、カシューナッツミルクも世界的に知られているが、日本での商品化はまだ少ない。
植物性ミルクが今後も持続的な成長を維持するには、牛乳や清涼飲料のように過当競争に走らず、新たなカテゴリーを創出するような施策が求められ、その兆しはすでに現れている。大型容器の豆乳やアーモンドミルク、オーツミルクが料理やコーヒーの割材として使われ始めており、「食」への浸透が次第に進んでいるからだ。牛乳や飲料と対峙しなければ過当競争が避けられ、価格も維持できる。
スーパーのチルド飲料、日配飲料売場は商品の改廃が最も激しいことで知られている。週ごと、月ごとに品ぞろえが変わり、新製品でも定着には時間を要する。植物性ミルクとして新たなカテゴリーを構築するには、「脱・改廃」に向けた施策や大型容器による「食」への浸透が求められている。コロナ禍で健康志向が高まる中、植物性ミルクの高タンパク質や低カロリーが見直されている時期でもあり、新たな取り組みが求められる。