21年度海苔漁期は冷凍網の1回目の摘採が終了したところ。全漁連がまとめた22年1月末現在の共販実績は、累計で26億400万枚(前期比14%減)、平均単価は13円72銭(同3%増)だった。前漁期が生産枚数が7%減少したにもかかわらず平均単価も20%下がったのに比べると順調な滑り出し。ただ、オミクロン株による第6波の到来で業務筋の動きがピタッと止まり、海況もこの先の栄養塩不足が懸念されるなど、生産量、需給バランスとも先の読めない展開となっている。
全漁連発表の1月末現在累計数字は、宮城・千葉・愛知などの東日本計は2億8千万枚(前年同期比12%減、以下同)、共販金額38億6千万円(4%減)、平均単価13円52銭。兵庫・岡山・香川などの瀬戸内計は7億3千万枚(6%増)、91億1千万円(27%増)、平均単価12円43銭。福岡・佐賀・熊本などの九州計は15億4千万枚(20%減)、222億9千万円(3%減)、平均単価14円42銭。
前漁期の生産枚数は64億5千万枚で、過去30年で最低となった18年の63億枚に次ぐ不作の年だったが、このまま推移すると初の60億枚割れも考えられるとする海苔商社は少なくない。佐賀西部の不良と、兵庫の出遅れが主な原因と考えられる。ただ、近年は韓国・中国海苔の輸入量が増え、以前は回転寿司など限定されたチャネルで使われていたものが、韓国産がコンビニの海苔巻きにも使われるケースが増えるなど、品不足を懸念する声は皆無。
一方、九州をみても明らかなように、数量が20%減でも金額が3%減でとどまっているのは単価が上がっているから。品質は、秋芽の1回目と冷凍網の1回目のいずれもが近年には珍しい良質なもので高値での入札が目立った。秋芽と冷凍網の初摘みが高級海苔の原料となるが、ここ3年間では昨年の秋芽の出来が最も悪く、上物の品薄感が強かったことが買いが強かった主な理由。
また、温暖化による海況の変化もある。これまでなら夏場の海が台風でかき回され海底にある栄養塩が漁場全体に行き渡っていたが、ここ5年ほどは11月にスコールのような激しい雨が降ることがあり、海水が真水になってしまう影響を受けるようになった。「セオリーが通じず、よく分からないこと、見たことのないことが起こり、全く先が読めなくなった」とする商社は多い。保存技術の発展で、海苔は5年ほど鮮度を維持できるようになった。いい時に多めに買っておきたいとする心理も上物の価格を上げている。
供給に関しては、昨年の11~12月とかなりの勢いで需要が回復し、工場をフル稼働させても注文に応じきれなかったが、オミクロンの急拡大で一気に冷え込んだとするメーカーもある。コンビニも20年度は前年比20%減、今年度はマイナス幅がさらに2~3ポイント増えそう。コロナが収束となっても、生活スタイルの変化で19年度の25億枚に戻るかは分からない。海況、消費とも先の見えにくい状況になっている。