日清食品は3日、6月1日出荷分から即席袋麺、即席カップ麺、即席カップライス、即席カップスープのメーカー希望小売価格を5~12%引き上げると発表した。
即席麺類の値上げは2019年6月以来、3年ぶり。
価格改定について同社では「全社を挙げて効率化・合理化を進め、可能な限りコスト削減に取り組むことで製品の安定供給、安全で安心な品質の確保、製品価格の維持に努めてきたが、自助努力だけではコスト増を吸収できない状況となった」としている。
今回の価格改定は、麺の主原料である小麦の価格が大幅に高騰していることに加え、原材料、容器や包材をはじめとする資材価格やエネルギー費、さらには物流費などの上昇が続いていることが要因。
主原料となる輸入小麦の政府売渡価格は、昨年10月に19%引き上げられたが、今年4月1日の価格改定でも大幅な引き上げが見込まれる状況となっており「販促費のコントロールなどでコストを吸収するのは不可能」(業界関係者)というように、現行価格の維持は困難と見られていた。
日清食品の主要商品の新価格(税別)は、袋麺「チキンラーメン5食パック」615円(現行555円)、「日清これ絶対うまいやつ3食パック」315円(同285円)など。
カップ麺は「カップヌードル」214円(同193円)、「カップヌードル ビッグ」245円(同220円)、「あっさりおいしいカップヌードル」138円(同125円)、「日清カレーメシ」242円(同230円)など。
3月28日に発売予定の「日清の最強どん兵衛」シリーズについては、新価格帯ということもあり発表済の税別248円で発売する。
原材料価格高騰の影響はメーカーを問わないため、袋麺5食パック税別615円、カップ麺(レギュラー)同214円という日清食品の新価格が今後の即席麺価格のベースとなる見通し。
今期の即席麺業界は、前期特需の反動を受けた第1四半期(4~6月)こそ前年割れだったが、第2四半期(7~9月)以降持ち直し、第3四半期終了時(4~12月)のメーカー実績はおおむね前年水準。袋麺は前期特需の影響が大きく前年割れとなっているものの、メーカー各社の新製品や積極的なメニュー提案などが奏功し、需要は高止まりだ。
カップ麺は、ロングセラーブランドの周年施策やブランドエクステンションの取り組み、外食の代替需要を受けたご当地商品や有名店コラボ商品の拡売などにより需要を喚起。コンビニチャネルの売上が回復基調となっていることなどもあり堅調に推移しており、第3四半期(10~12月)の総需要は袋麺、カップ麺とも前年を上回って推移している。
即席麺業界では過去、価格改定前に駆け込み需要が発生、その後、反動減、PBやオープンプライスといった価格コンシャス商品への需要シフトが起こり、特売価格も気付けば価格改定前ということが繰り返されてきた。
メーカーサイドの企業努力による部分が大きかったが、今回は原材料、包装資材、原油高を背景とするエネルギー、物流、為替(円安)などが複合的にマイナスインパクトとなって現れており、過去の価格改定時とは大きく事情が異なる。
価格改定が実施される6月1日時点でウイズコロナか、アフターコロナなのかの予測もつかず、国内外の経済や家計への影響は計り知れない。
コロナ要因と価格改定という二つの大きな課題をクリアし、いかにして収益を確保しながら需要を喚起し続けていくか。即席麺業界に限った話ではないが、難しい舵取りを迫られる2022年となりそうだ。