「座りすぎ問題」WHO・厚労省も警鐘 健康リスク低減のためにやるべきことは? ネスレ日本が発信

 長時間座りすぎることが健康に悪影響を与えると、日本や世界で問題視され始めている――。

 こう指摘するのは、東北大学大学院医学系研究科運動学分野の門間陽樹准教授。ネスレ日本が4月10日に主催したセミナーに登壇した。

 今年1月、厚生労働省は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」を公表。10年ぶりの改訂で、初めて「座位行動」という概念が新たに設けられた。

 「座位行動」とは、目が覚めている状態で、座ったり、横になったりする時間のこと。デスクワークのほか、TVやスマートフォンを視聴する行為も含まれる。座りすぎを避けて、少しでも多く身体を動かすことが推奨される。

 世界保健機関(WHO)も座位行動に注意喚起を促す。
 WHOは、2010年に発表した「身体活動に関するガイドライン」を2020年11月に更新。「運動・身体活動および座位行動に関するガイドライン」と題し、タイトルで初めて座位行動に触れた。

 成人(18~64歳)や高齢者(65歳以上)など幅広い世代に対して、座位のまま過ごす時間が短くなるように制限をかけることを推奨している。

 早稲田大学のスポーツ科学学術院の岡浩一朗教授も、座りすぎることで心身にリスクが生まれることを解説。
 就労者における余暇・仕事中の座りすぎが、肩こりや腰痛など身体の不調の原因となるだけでなく、抑うつ・不安症状や認知機能にも悪影響を及ぼすと指摘する。

 座りすぎることの悪影響を減らすポイントとして、動く頻度を多くすることを岡教授は推奨。
 一例として、座ってできるエクササイズや昇降デスクの活用、コーヒーブレイクを挙げる。

 「特に、コーヒーの摂取はメタボリックシンドロームや心血管疾患の発症リスク、総死亡リスクを下げる可能性があるとみられる。立ち上がってコーヒーを淹れて飲むコーヒーブレイクは、座りすぎ対策として一石二鳥といえる」と話す。

 コーヒーブレイクをとることで、リフレッシュできストレスが軽減される。
 加えて、同僚や上司・部下とのコミュニケーションの機会も増加し、精神面でも良い影響が期待できる。
 
 岡教授は「立ちっぱなしも良くないが、座りっぱなしも良くない。いきなりスポーツをするのは難しくとも、まずは立ってみることから始めていただきたい」と勧める。

 門間准教授は「座りっぱなしの時間が長くなりすぎないよう、注意することが必要。立つのが困難な人も、じっとしている時間が長くなりすぎないように、少しでも身体を動かす方がいい」と説明する。

左からネスレ日本の嘉納未來執行役員コーポレートアフェアーズ統括部長、東北大学大学院医学系研究科運動学分野の門間陽樹准教授、早稲田大学のスポーツ科学学術院の岡浩一朗教授 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
左からネスレ日本の嘉納未來執行役員コーポレートアフェアーズ統括部長、東北大学大学院医学系研究科運動学分野の門間陽樹准教授、早稲田大学のスポーツ科学学術院の岡浩一朗教授

 ネスレ日本も、「座りすぎ問題」を世に広めることでウェルビーイングを推進。コーヒーの企業として、「コーヒーブレイク」による座位行動の中断を提案する。

 ネスレ日本の嘉納未來執行役員コーポレートアフェアーズ統括部長は「まずは我々社員が“ブレイクの達人”になって、今年は社内から社外へ『座りすぎ問題』とブレイクについて発信していく。今後は、他の企業様とも一緒にセミナーなどをやっていきたい」と語る。

 同社は4月10日から、「座りすぎ」に関する問題とそれを解消するブレイクについてまとめた新コンテンツ「座りすぎ問題とブレイク」を公式HPで公開している。