高品質な乳製品生み出す酪農先進国アイルランド 持続可能な生産で世界をリード 日本の顧客ニーズに寄り添う

高品質な乳製品を世界140以上の国・地域に輸出する、酪農大国。そう聞いて、どの国を思い浮かべるだろうか。

正解は、欧州西端の島国・アイルランド。国土の半分以上を農地が占めるこの農業国では、世代間で代々受け継がれてきた酪農でも長い伝統を持つ。

酪農生産量は過去8年間で80%の伸びを見せ、昨年も国内消費量を大きく超える約880万tの牛乳を生産。人口は日本の4%程度ながら、日本の生乳生産量(22年は約753万t)を17%上回っている。

ドイツ、アメリカでそれぞれ№1、2のバターブランド「ケリーゴールド」をはじめとした製品で世界的な評価を獲得。認知度は日本でもじわじわと高まりつつある。

高品質な製品を生み出すのが、同国の高い技術力と最新の設備だ。世界の顧客が要求する厳しい基準を満たし、時代とともに変化する要求に迅速に対応する産業構造により、高品質な乳製品を世界に安定供給している。

世界的な乳製品供給国としての認知の高まりと、2018年に発効した日EU経済連携協定(EPA)の効果から、日本への輸出が急増。対日輸出額は22年も前年比36.2%増と躍進が続く。このうち主力のチーズが33.9%増と全体を牽引する。

家族経営の農場が大半を占めるアイルランドの酪農は、持続可能性と品質基準に関して世界トップクラス。これを支える同国独自の国家プログラム「オリジン・グリーン」は、今年で10周年を迎えた。アイルランド産の食品・飲料輸出の90%を占める5万5千の生産者や300企業がメンバーとして参加する。

その重要性の一端を示すのが、環境負荷低減に果たす大きな役割だ。

屋外放牧と牧草の飼料による酪農システムにより、少ないCO2排出量で最高品質の乳製品を生産することが可能に。「オリジン・グリーン」のプログラムを通して、排出量を過去8年間で7%削減することに成功している。生乳1kg当たりの生産によるCO2排出量は平均0.97㎏。この数値は世界の先進的な酪農地域でも1.3~1.4㎏とされていることからも、トップクラスの水準といえる。

日本市場のニーズへの洞察力、そしてサプライチェーン全体にわたる専門知識でも優位性を発揮する。

「アイルランドの乳業界は、どのような製品が特定の用途に適しているかを判断する専門家」と説明するのは、アイルランド政府食糧庁(ボード・ビア)ジャパンマネージャーのジョー・ムーア氏。

「お客様と緊密に連携を図り、例えばとろけるチーズの焼き色や伸びる具合、外食向けのスライスチーズ、シュレッドチーズ、キューブスタイルチーズ、またテーブルチーズやバターの正しい有機特性の特定など、機能性に関するニーズを把握している」という。

今年は3月に開催された「国際食品・飲料展FOODEX JAPAN2023」に出展したのを皮切りに、業界向けセミナーや酪農関連メディアの生産現場の視察取材を実施。これらの活動を通じて、日本市場へのアピールを強めている。

「日本の顧客は、品質、食品安全、とりわけ味に関して非常に高い期待を持っている。私たちの製品はその期待に十分応えられると確信する。既存パートナーはもちろんのこと、新たなパートナーシップも積極的に構築していきたい」とムーア氏は意欲を語る。

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