伊藤園は「TULLY’S COFFEE(タリーズコーヒー)」ブランドで、好調要因であるレギュラーコーヒー品質というコーヒー飲料の本道を引き続き追求しつつ、新たな領域にも挑みさらなる拡大を目指していく。
2022年、コーヒー飲料市場は、全国清涼飲料連合会の「2022年清涼飲料水生産数量及び生産者販売金額」によると生産量が99.1%と前年割れとなる中、「タリーズコーヒー」の販売数量は10%増と拡大した。
好調要因について、井上信一マーケティング本部新ブランド育成・コーヒーブランドグループ商品チーフは「市場を見渡すと、コーヒー生豆の高騰を受けてか、フレーバー系のアプローチが多く、コーヒー本来のおいしさを追求した動きが控えめのような印象を受ける。そうした中で、コーヒーのおいしさを求められるお客様が結果的に『タリーズコーヒー』に入ってきた」と振り返る。
好調アイテムは、「TULLY’S COFFEE BARISTA’S(タリーズコーヒーバリスタズ)」シリーズの「BARISTA’S BLACK(バリスタズブラック)」(390ml)と「バリスタズ無糖ラテ」(370ml)のボトル缶コーヒー。
中でも一番の牽引役は、「バリスタズブラック」。原価高騰の中でも、アラビカ種コーヒー100%使用のスペックを堅持し、昨年10月からはパッケージでアラビカ種コーヒー100%使用を訴求している。
「施策ではないのだが、コストアップの中、品質を変えなかったことも大きいとみている。お客様からは“今の味を変えないで”というお声を多く頂戴し、『バリスタズブラック』はコーヒー好きのお客様からのご支持が厚いことを改めて痛感した」と述べる。
コンビニや自販機で男性層から圧倒的な支持を集めコンビニのコーヒー飲料カテゴリーでナンバー1のリピート率を堅持しているほか、スーパー・量販店へ拡販したことで、女性層を獲得するなど飲用層にも広がりをみせている。
スーパー・量販店で購入する女性層からは、注ぎ飲みという新たな需要が顕在化し現在も続いているという。
広義のブラックコーヒーと位置付けている「バリスタズ無糖ラテ」は、ラテユーザーではなくコーヒーユーザーの選択肢の1つとして選ばれ、じわりと販売と導入を拡大している。
「コーヒー飲料市場は無糖にシフトしており、当社が調べたところ、コーヒー飲料全体に占める無糖の割合は10年の18%から21年に34%へと拡大している。『バリスタズ無糖ラテ』はブラックユーザーに飲まれていることから、ブラックコーヒー市場の拡大に伴いユーザーが流入しやすい構造にある」と説明する。
自販機では、「キリマンジャロBLACK」(285ml)が健闘。「『バリスタズブラック』以上に本格コーヒーを嗜好するレギュラーコーヒーユーザーから支持され、『バリスタズブラック』とカニバリを起こすことなく伸長している」という。
自販機への導入が拡大し昨秋、中味とパッケージを刷新して以降一部コンビニにも先行導入。今春から全業態に開放して提案を強めていく。
「昨年はPETのブラックコーヒー市場も拡大したが、ブラックコーヒーはまだまだボトル缶の構成比が高く、PETの1.3倍のボリュームがある。ボトル缶ブラック市場が活性化すれば、『タリーズコーヒー』への追い風となる」と期待を寄せる。
この春夏は新しいチャレンジとして本道コーヒー以外の世界観にも挑む。
「ショップ品質のコーヒーの本道をしっかり守りつつ、その一方でワクワクする楽しいブランドだと思っていただけるような商品とコミュニケーションを予定している」と語る。
市場見通しについては「原価高騰もあり、ミルク入りやフレーバーなど本格コーヒーから少しずらした商品が多くなり、盛り上がるかとは思うが、それだけではご満足いただけないお客様がいらっしゃる。おそらく一巡すると、“やはり本当のおいしいコーヒーが飲みたい”といった動きが強まり、我々はそのときに向けても万全の準備を進めていく」との見方を示す。
秋口には、ドリップバッグ(ドリップコーヒー)など家庭内需要に対応した“おうち商品”の拡充やおうち商品とドリンクとの連携強化も予定している。
おうち商品では、 21年7月に発売開始した大容量シリーズ「MY HOME BLACK COFFEE」「同 微糖COFFEE」が好調に推移している。
この好調要因については、「こだわりが強い商品は味の個性も強かったりする。ホームサイズは家族で飲まれるため、尖がりすぎず、家族みんなで楽しめる苦味・コク・すっきりの味わいに設計した」と語る。