課題は買上げ点数の減少 電気代高騰を受け効率化と「新しい」「買いたい」の創出に挑む「いなげや練馬西大泉店」

 いなげやは15日、東京都練馬区に新店「いなげや練馬西大泉店」を出店した。
 電気代が高騰する厳しい経営環境の中、同店では棚や冷蔵ケースを減らすなどの効率化を図りつつ、「お客様にとって日々アップデートされた“新しい”“買いたい”があるお店」をストアコンセプトに掲げて来店客の選ぶ楽しさを追求し魅力ある売場づくりに挑む。

 この日会見した本杉吉員社長は「練馬西大泉店では、いかに地域のお客様に貢献できるかを考え、お客様の生活や食卓が豊かになることをイメージした。ここで検証を重ねながら既存店の改装や次の新店に活かしていく」と語る。

 検証ポイントの1つは効率化で「冷蔵ケースを減らしながら魅力ある売場にしていくことや、逆に冷蔵ケースを増やすことでバックヤードの冷蔵庫や施設をどれだけ削れるかを検証していく」。

 バックヤードの取り組みの一例としては、区画を行い衛生面に配慮しながら、鮮魚鮨と惣菜の鮨の作業場を一本化したことが挙げられる。

生鮮売場 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
生鮮売場

 売場づくりでは、生鮮惣菜強化の方針のもと、売場をコンパクト化しつつ回転率を上げていくことに挑む。

 「通常のお店では青果売場は3島(区域)あるが、練馬西大泉店では2島にした。精肉も島を1つ減らした。強化しようとして、どんどん売場が広がってきたものを一度コンパクトにした」と述べる。

 什器削減や冷蔵ケースの短縮化にも取り組み、限られたスペースでの魅力ある品揃えに挑戦していく。

 「今期、大型店の改装をいくつか実施し、惣菜の売場を広げたのだが、やはり商品を埋めきれなかった。ピーク時には全部埋まるのだが、惣菜は毎日売り切りのため、朝や晩は商品数が少なくなってしまう。いつでも商品が豊富にあるような売場を目指して適正な尺数を考え、惣菜も昨年の改装店と比べ1島削っている。この結果を検証しながら次のお店に活かしていく」考えだ。

 直近の課題としては、買い上げ点数の減少を挙げる。

 「どこの会社も同じかもしれないが、1月から客数は獲得できているものの、1人当たりの買い上げ点数が減ってきていることが顕著に出始め厳しい状況になっている」と危機感を募らせる。

 この課題に対しては、単品ではなく、カテゴリー単位で割引を行う分類割引や商品の絞り込みなどで対応する。

 「お客様が必要とされない商品は買われないということになっているので、もう少し商品を絞り込みながら生産性を上げていく。加えて、価格に非常に反応するものに関しては価格を下げていく」。

 来店頻度が高くなる近隣住民などに対しては、ワクワク感を打ち出すべく「新しい」「買いたい」の創出に挑む。

 練馬西大泉店の半澤高志店長は「来店していただいて“昨日はなかったが、今日はあるよね”といった楽しみを感じていただけるような売場をつくりたい」と意欲をのぞかせる。

 従業員の意識を促して、SNSや店舗周辺エリアで流行っている商品も積極的に品揃えしていく。
 そのほか「百貨店ではなくスーパーなので、気軽に手に取っていただけるような“ちょっといいもの”“ちょっとおいしいもの”も取り揃えていく」。

 売場としては、スイーツを強化。

 「“珍しい”ものがある”“おいしそうなものがある”と感じていただけることに重点を置いた」とし、練馬西大泉店限定の「手造りワッフル」などのスイーツを、惣菜売場とレジ前の間にあるフレッシュデザートのコーナーで販売。フレッシュデザートのコーナーではインストアやNBなどの和洋中のスイーツをまとめて展開している。

 練馬西大泉店のメインターゲットである子育て世代を意識して、若年層に人気とされる生ハムやパンの売場も拡充。

 NBの定番売場については「定番売場からの露出は難しいので、例えば全店で調味料の特売が入ったときに、従業員の判断で、一押しの調味料をPOPなどで訴求していく」という。

 青果売場では、店の顔として鮮度にこだわった野菜や旬のフルーツを日替わりにてお値打ち価格で提供。おいしいフルーツを「こだわりま撰果(せんか)」の名称で販売し、規格外やキズ果などを「得しま撰果(せんか)」の名称で販売している。

 鮮魚は、季節魚などの生ネタを盛り込んだ鮮魚鮨を導入し、お鮨や海鮮丼、太巻きなどをいなげや最大の品揃えで展開。冷凍コーナーも最大規模で、タイパ(タイムパフォーマンス・時間帯効果)への対応としてシーフードメインの冷凍ミールキットなどを強化している。

 なお今期(3月期)改装店舗数は上期5店舗・下期1店舗の計6店舗。今期は冷蔵ケースの入れ替えなど2週間以上の店休を伴う改装が多かったという。

いなげやの本杉吉員社長 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
いなげやの本杉吉員社長

本杉吉員(もとすぎ よしかず):1964年3月20日東京都生まれ。58歳。1986年3月明星大学人文学部卒業後、いなげや入社。2011年6月執行役員、12年10月営業企画本部長、14年9月グループ人事本部長、16年6月取締役販売本部長、18年7月商品本部長、19年10月営業本部長を歴任し20年4月から現職。

【写真】いなげや練馬西大泉店限定の「手造りワッフル」

 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)