グリコ「アーモンド効果」需要急増で浮上した健康ニーズに照準 ブランドと栄養価値伝えるコミュニケーション強化 接点も拡大

 アーモンドミルク市場の9割強のシェアを握る江崎グリコの「アーモンド効果」は、昨年9月14日に放映されたTV番組「林修の今でしょ!講座」(テレビ朝日系)で需要が急増し、インテージSRI+によると9-12月の販売個数は前年同期比約160%記録した。

 同社は今年、TV効果による需要急増で浮上した健康ニーズに着目してマーケティング活動を展開していく。

 取材に応じた健康事業・新規事業マーケティング部の折原唯氏は「TV番組によって40‐60代の新規購入者と購入者あたりの個数が非常に増えた。女性だけではなく男性にも響き、この層は健康への関心が高いことから、ブランド広告を行いながらアーモンドミルクやアーモンドそのものを理解していただく活動に注力していく」と語る。

江崎グリコ健康事業・新規事業マーケティング部の折原唯氏 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
江崎グリコ健康事業・新規事業マーケティング部の折原唯氏

 TV放映後の2週間、放映前2週間との比較で市場規模は約2倍に急拡大したと推定。
 その間、「アーモンド効果」は「新規顧客が200mlを非常に手に取り、そもそも伸び率が高かった1Lサイズも飲用量が増え200ml・1Lともに伸長した」。

 同社は当初、この動きを一時的なものと予想していたが、特に新規顧客の急増により回転の高止まりが継続したことから「今後もこの傾向が続く」と判断した。

 11月29日に一部商品を休売し、増産を図りながら「オリジナル」「砂糖不使用」などのメインアイテムの生産量を上げて供給し続けていった。

 休売したのは「薫るカカオ」「香ばしコーヒー」「 ほろ苦キャラメル」の200ml3品と「3種のナッツ」1L1品の計4品で、供給体制を整えて今年2月28日に再発売された。

売場に並ぶ「3種のナッツ」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
売場に並ぶ「3種のナッツ」

 この春夏は、新商品を出さず既存商品に磨きをかけていく。
 現在は、需要急増の状態から落ち着きを取り戻しつつも、2ケタ前後で成長を続けている。

 この中で、特筆すべきは「3種のナッツ」の好調。
 「柱である『オリジナル』と『砂糖不使用』を中心にブランドを盛り上げていこうとしている中で、『3種のナッツ』が半年くらい前から強くなった印象で、『オリジナル』と同じくらいの好回転となっている」と説明する。

 これには「3種のナッツ」の1Lを一時休売としたものの、200mlの販売を継続し消費者との接点を保ち続けてきたことも寄与したとみられる。

 売場の取り組みとしては、チルド(冷蔵)での高い導入率を維持しつつドライ(常温)での販売に拡大余地を見込む。既にドラッグストアではドライの棚で広がりをみせているという。

ドライ(常温)で販売される「アーモンド効果」の1Lサイズ(下)と200mlサイズ(上) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
ドライ(常温)で販売される「アーモンド効果」の1Lサイズ(下)と200mlサイズ(上)

 ドライ開拓には他ブランドとのコラボも有効と捉えている。

 「アーモンドミルクコーナーや植物性ミルクコーナー以外では、『アーモンド効果』は常温商品のため、常温での展開を拡げている。他社ブランドとコラボすることで、定番棚に追加してコーヒー・ココアの嗜好品売場やグラノーラ、パン売場などさまざまな売場を獲得している。常温の専用什器も用意しており引き続き強化していく」考えだ。

 昨年実施した主なコラボは「ブレンディ」(味の素AGF社)のインスタントコーヒーや「バンホーテン ミルクココア」(片岡物産)「辻利 抹茶ミルク」(同)2品で汎用性にも広がりをみせている。

 「『アーモンド効果』は単体で飲まれる方が多いが、他社ブランドとのコラボのおかげで、料理やコーヒー、ココア、抹茶、紅茶などに入れて飲まれる方が増えてブランドの成長にとても貢献している」と述べる。

 この汎用性による家庭内需要の深耕に加えて、家族シェアという点でも1Lの果たす役割は大きいという。

 「家族シェアは年々増加している。1Lが家庭内に入ることでパートナーや子どもも愛飲するようになったというお声が聞かれるため、家族を味方にすることが1Lの成長には欠かせない」との見方を示す。

「アイスの実〈濃いアーモンドミルク〉」(右)と「アーモンドミルクカフェオーレ」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「アイスの実〈濃いアーモンドミルク〉」(右)と「アーモンドミルクカフェオーレ」

 社内シナジー効果にも挑む。同社初の試みとして「アーモンド効果」の原料を一部に使用した「アイスの実〈濃いアーモンドミルク〉」と「アーモンドミルクカフェオーレ」を3月に新発売した。

 これには「グリコとしてアーモンドミルクや植物性ミルクのよさを他のブランドからも発信していく」考えが背景にある。

 初動は2品ともに上々。

 「『アーモンド効果』のユーザーが『アイスの実』を購入するというデータも出てきている。『アーモンド効果』としてもアイス売場周辺に什器をつけてドライで販売していただくなどブランド横断の動きに手応えを感じている」という。

 公式ツイッターアカウントでは、スポーツフーズブランド「パワープロダクション」のプロテインシリーズにアーモンド効果を合わせて飲む提案も行っている。

 コミュニケーションは、新TVCMの他にWEB・新聞・雑誌広告などを展開しセミナーでアーモンドやアーモンドミルクの啓発を行っていく。

「セブンカフェ アーモンドミルクラテ」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「セブンカフェ アーモンドミルクラテ」

 「アーモンド効果」の認知は9割程度と高く、次のステージとして「ブランドを知っているものの、試したことのない方にいかに試していただくかが課題」とみている。

 この課題解消に向けてはコンビニのカウンターコーヒーなどをはじめとする家庭外での接点に期待を寄せる。

 「沖縄ファミリーマート様では、昨年一部店舗でテスト展開し、現在約270店舗で販売していただいている。今年は、セブン-イレブン・ジャパン様でも『セブンカフェ アーモンドミルクラテ』を都内230店舗で先行発売していただいている」と述べる。

 なおインテージSRI+によると、アーモンドミルク市場の21年1-12月の推計販売金額は前年比約126%。トップシェアの「アーモンド効果」も市場同様の伸びをみせたと推測される。