J-オイルミルズ佐藤社長 油脂コスト「昨年以上に膨らむ」 収益構造改革が急務

J-オイルミルズは、第六期中期経営計画(21-24年度)を見直す。世界的な油脂の需給ひっ迫による原料価格の高騰、原油高、円安の進行など外部環境が大きく変化しているため。今期から就任した佐藤達也社長は5月20日の決算会見で、「第六期中計で掲げたビジョンや目指す方向性は変わらないが、今後の事業環境や展望をあらためて検証し、現状に見合った目標を設定する」と説明した。新たな計画は今秋にも公表する予定。

同社の前期連結決算は、売上高は価格改定効果もあり前期比22.3%増の2千15億円となったが、大幅な原材料コスト上昇をカバーしきれずに約2千万円の営業損失を計上。04年の創設以来、初めて営業赤字に転落した。

大豆・菜種など原料価格の高騰で、油脂事業の原材料コストは約431億円の負担増となり、ミール販売(138億円)を差し引いた油脂コストは年間約293億円もの増加。これを販売価格の改定(197億円)、高付加価値品の拡販(48億円)で約240億円を打ち返したが、大幅な原料価格の上昇には追いつかず、油脂事業の営業利益は前期比94.8%減、約59億円の大幅減益。さらに燃料資材の高騰や油脂加工品の価格改定の遅れもあり、収益悪化につながった。

22年度も原料価格の高止まりと為替の悪化(21年度1ドル110円→今期127円想定)により、原料コストは昨年以上に厳しくなる見通し。佐藤社長は「原料価格高騰への対応と収益構造改革を喫緊の課題として、スピード感をもって構造改革に取り組む」考えを示した。

油脂の収益性改善では、付加価値型クッキングオイルへのシフト(家庭用)、長持ち油など付加価値品の拡販(業務用)による製品ミックスの改善、バリューチェーン全体の構造改革を推し進める。マーガリン事業の収益化については、SKU削減による生産性向上、営業戦略の見直し、マレーシアPF社との日本向け製品の製造・輸出によるコスト競争力強化とアセアンでの拡販を進める。

なお、マーガリン事業については3期連続の赤字となっており、「今期中の黒字化を目指すが、難しい場合はしかるべき検討が必要になる」と言及した。

第六期中計の定量目標は修正するが、成長戦略で掲げた環境対応容器の拡充や、おいしさ×健康×低負荷による付加価値品の開発、乳系PBFブランド「ビオライフ」、食感改良などテクスチャーデザイン事業などの取り組みは継続する。

油脂の価格改定について、上垣内猛専務執行役員油脂事業本部長は「原料コストと販売価格のタイムラグを短縮するために、アナウンスを前倒しするなど、先々のコストをどう吸収していくか、お客様との連携をさらに深めていく必要がある」と語った。

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