前提からこぼれ落ちるもの

うちには炊飯器がない。使ったことがないので、使い方も知らない。それでもご飯は毎日炊いている。では何で炊くのかといえば、以前の土鍋に代わって今は圧力鍋だ。

▼忙しいときも短時間でふっくらと炊き上がるので、家人ともども愛用している。炊飯に圧力鍋を使う人は全体の3.5%らしいので(マイボイスコム調べ)、企業のマーケティングではほぼ無視される消費者像といえるだろう。

▼ある世界的消費財メーカーでは最近まで「ママの公式スポンサー」を標榜していた。洗剤などの家庭用品を利用するパパは3.5%どころではないはずだが、公式スポンサーにはなっていただけないようだ。とはいえダイバーシティやジェンダー平等に力を入れる企業でもあるので、全く違った意図があるのかもしれない。

▼既存の典型的イメージを意思決定に利用する思考のクセ「代表制ヒューリスティック」はスピーディな判断に役立つ一方、そこから漏れる対象が必ず出てくる。「女性目線で」「お客様の視点で」と言うとき、そこに紛れ込む無意識の前提からこぼれ落ちているものにも、ときに目を向けてみたい。