海苔 作柄良好、手厚く仕入れ 永井海苔 久田和彦社長【21年度漁期を振り返って③】

日本初の焼のりのハラール認証取得やフレーク状の海苔にごま油や塩などで味付けして炒めた「ジャバンのり」のヒットなど中京圏から業界に新たな風を吹き込んできた永井海苔。21年度漁期を踏まえ今後の販売戦略などを久田和彦社長に聞いた。

――21年度漁期について振り返りをお願いします。

久田 1月には60億枚割れという話も出て「非常にまずい」と思っていたが、ある程度数量が増えた。業界内で大騒ぎにならないのは、以前よりも末端の消費と業務用の動きが弱いからだ。特にCVSが回復基調とはいえ、最盛期に比べ落ちている。18年度に生産枚数63億枚、平均単価13円台を経験したが、実態とかけ離れていたため市場で受け入れられず「海苔離れ」が起きてしまった。焼のり10枚で800~1千円の商品は、百貨店などで購入する人はいるが、一般の人はそうではない。家庭用でも400円以上のものは簡単に売れない。だから、メーカーは赤字覚悟で値上げを自重している。18年度当時はCVSに大きな力があったため需給バランスが崩れた上に、原料を確保することが優先されたため相場が吊り上がった。昨年、今年と過熱した相場が冷静になったということだ。これまでの持ち越し在庫の影響もあるだろう。

――品質面はいかがでしたか。

久田 有明海は一昨年、昨年と比べて海の水温が下がったので、品質は圧倒的に良かった。良品が多かったため、当初の計画よりも多めに仕入れた。昨年は2月後半以降、ザラついたものが多かったが、今年はそういうものは少なく、最後まで例年より良品質のものが生産されたため在庫として持つ価値があると判断した。コンビニ向けも市場全体は減っていると言われているが、昨年並みに手当てした。品質が一定以上のものを仕入れるという方針は変えていない。上、中、下と価格帯に応じて「おいしい」と言われる商品づくりを心掛けている。また、今年3月には環境に配慮した紙のパッケージを使った商品の販売も始めた。SDGsを絡めた新たな試みで、普段取引のない大型スーパーなどでも評価してもらい取り扱ってもらっている。

――海苔の消費喚起のために何が必要ですか。

久田 高価格帯のみを訴求しても買う人が少なくなっているので、ボリュームゾーンの商品を買ってもらう戦略が必要だ。一方で、巣ごもり需要の伸びは鈍化したものの、前年実績は割り込んでいない。来夏には新工場が稼働する予定で、SDGsなど時代の流れに沿った商品を引き続き開発し売り上げ拡大を目指していく。おつまみ需要や色々な料理への汎用性のあるジャバンのりは老若男女に幅広く浸透していて好調だ。

今後の課題は、20~30代の若年層に向けた訴求。若い社員を中心にチームを立ち上げ、SNSやネットでの情報発信に力を入れ、食べ方やレシピ提案などを通じて消費を喚起したい。商品の値上げは原料単価がそこまで高騰したわけではないので難しいが、PB商品は包材や物流のコスト増加分を考慮してもらうため、各社と個別に交渉している。今後もこの流れは止まらない可能性があり、各企業との取り組みを強化し対策を話し合っているが、海苔を食べてもらうための販促も継続的に行っていく。