業績低迷続く九州地区百貨店 コロナで経営環境が悪化

九州エリアの百貨店は新型コロナ拡大に伴う影響を受けて依然厳しい状況が続いている。昨年末はコロナ感染者が大きく減少し回復基調となっていたが、今年に入りオミクロン株が一気に広がったことで状況が一変した。

福岡市内の百貨店をみると岩田屋三越の22年3月期は売上高が前期比13.5%増の960億円、経常損益は8億700万円の赤字から8億700万円に、当期純損益は14億200万円の赤字から5億8千200万円にそれぞれ黒字転換した。上期が予想を下回ったことで売上高を38億円、経常利益と当期純利益を3億円ずつ引き下げた。昨年末までは感染者数の減少で客足は戻りつつあるが、売上の本格拡大には至っていない。

今年に入ってからの売上高は、1月に22.9%増となったものの、2月に1.9%減とマイナス、3月は5.4%増と再びプラスに転じるなど乱高下も大きい。今春から新たな営業施策としてアプリによるショッピング機能を活用したリモート接客をスタート。外出を控えたい顧客に対してスマホの画像を見ながら商品案内や商談を行っており、コロナ禍での新しい接客法としてリモート営業の強化に努めている。

一方で本店や福岡三越店、久留米店の3店舗体制による家賃負担が大きいことから、経営効率をいかに高めていくかが課題になっていくものとみられる。

博多大丸の2022年2月期決算(国際会計基準)は売上収益が前期比12.4%増の125億3千900万円と増加に転じた。事業利益は8億9千300万円の赤字(前期は9億9千万円の赤字)、経常利益に相当する営業利益は13億9千500万円の赤字(同17億300万円の赤字)、当期赤字は13億900万円から17億8千900万円に拡大した。黒字転換を見込んでいたが、売上未達で2期連続赤字となった。

直近3か月の月別売上高は1月27.9%増、2月12.6%増、3月3.0%増といずれも増加基調にあるが、オミクロン株の拡大次第ではいったん回復していた客足が再び遠のく恐れもあるため、完全回復にはまだまだ時間がかかるものとみられる。

同社では同一労働・同一賃金制の導入や年功序列制度の廃止に加えて、売場の運営を取引先に委託する方式を採用するなどの構造改革にいち早く取り組み、販管費抑制策に注力してきた。売上が伸び悩む中、さらなる販管費の抑制を断行するのが難しい状況となっている。

福岡の北九州エリア、井筒屋の22年2月期の連結決算は、昨期はコロナ禍での臨時休業や時短営業があったが、その反動に加え高級ブランド家具などの販売が好調で売上高が前期比5.2%増の531億4千400万円。営業利益12億8千400万円(前年同期は1千200万円の営業利益)、経常利益10億4千700万円(同1億6千500万円の経常損失)、純利益11億7千100万円(同1億1千100万円の純利益)でそれぞれ着地した。

本店に経営資源を集中する戦略が奏功し、業績が安定してきている。一昨年8月に黒崎店を閉鎖した影響のほか、連結子会社のコレット井筒屋によるコレット(北九州市)や山口井筒屋による宇部店(山口)を閉鎖。実質的に小倉店の1店舗体制にし、経営資源を同店に集中したことで販管費の大幅削減に成功した。ただしオミクロン株の急拡大に伴い、再び業績が悪化すれば人件費を含めたさらなる固定費削減を迫られる可能性もある。

対して福岡を除いた九州地区の百貨店にとっても厳しい局面が続いている。熊本の鶴屋百貨店、大分のトキハ百貨店、鹿児島の山形屋百貨店などは今期実績を公表していないが、いずれも長引くコロナ禍で売上への減少傾向に歯止めをかけられない見通しとなっている。

鶴屋百貨店は2015年に県民百貨店が閉店した影響に伴う残存者利益を得て収益が安定していたが、一昨年9月の「サクラマチ クマモト」や昨年4月の「アミュプラザくまもと」の開業が相次いだことで状況は一変した。コロナ禍で周辺環境が激化し、顧客の取り合いがヒートアップする中、今春から別館地下1階を改装するとともに、オンラインを活用した集客に力を入れる。今期業績は公表されていないが、今後の展開次第では一段と落ち込む可能性もある。ローカル企業が防戦を余儀なくされる中、どういった展開を進めていくか、真の実行力が問われることになる。

大分のトキハ百貨店は昨期で3年連続で最終赤字となった。今期は黒字化を目指しているが、苦戦が続いている。別府店などの不採算売場の縮小化と販促費を抑制すべく、正社員数の削減に着手しているが販管費が高い点がネックとなっている。

目下、テナントの売上構成比を高めながら不採算な売場を縮小し、売場稼働率を高める。本店では物品売場を縮小し、健康関連施設を導入。一昨年に改装した別府店でも演劇場や企業事務所を誘致し従来とは違う顧客層の取り込みを行っている。

鹿児島の山形屋の2021年2月期は経常損失14億1千500万円、減損損失14億3千300万円。今期は売上高が22.1%増の381億2千万円、営業利益1億8千万円の黒字転換を目指すものの、コロナ禍での苦戦が続く見通し。人員削減による販管費抑制を推し進めているが、収益回復までには至らず経営環境は依然厳しい状況となっている。

とくに福岡中心部を除く九州各県のエリアは地域の消費基盤が脆弱化しており、各百貨店にとって経費削減策以外の術を見いだせていない模様だ。それだけにコロナ収束後も百貨店の縮小傾向は続くものと想定される。今後も百貨店各社が厳しい経営環境に直面することは間違いなさそうだ。