「ウィルキンソン」新規ユーザーの取り込み強化 炭酸水市場のアルコール代替ニーズの高まりやフレーバーに着目 

 アサヒ飲料は炭酸水トップシェアブランドの「ウィルキンソン」でアルコール代替やフレーバーを切り口に新規ユーザーの取り込みを強化している。

 炭酸水市場が近年拡大を続ける中、「ウィルキンソン」では飲用経験率の点でさらなる拡大余地を見込み、今年を間口(飲用層)拡大の年と位置付けている。

 取材に応じた内田晴久マーケティング本部マーケティング一部無糖炭酸・果汁グループグループリーダーは「10年前には皆無に等しかった炭酸水の飲用経験者は5割程度に上昇したものの、7割とされる一般的な飲料に比べて2割の乖離があり、炭酸水を当たり前の飲み物として認知していただくために間口を広げていきたい」と語る。

 新規ユーザー獲得の今年の柱と位置付けるのが、ライフスタイル炭酸水「#sober(タグソバー)」シリーズとフレーバー炭酸水「クラッシュ」シリーズで、どちらも今年新たに立ち上げられた新シリーズとなる。

アサヒ飲料の内田晴久マーケティング本部マーケティング一部無糖炭酸・果汁グループグループリーダー - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
アサヒ飲料の内田晴久マーケティング本部マーケティング一部無糖炭酸・果汁グループグループリーダー

 この新シリーズを中心としたフレーバー展開で新規ユーザーを獲得して「ウィルキンソン タンサン」と「ウィルキンソン タンサン レモン」のメインアイテムへ呼び込むのが最終的な狙い。

 「タグソバー」シリーズは、欧米の若者の間で広まる“あえてお酒を飲まないことを選択する健康的なライフスタイル”を意味するソバーキュリアス文化を意識したアルコール代替商品だが、そもそも炭酸水そのものに家庭内でアルコール代替ニーズが顕著になっていると内田グループリーダーは指摘する。

 「21年は当社だけではなく市場全体でアルコールからの流入が顕著にみてとれる。“今日はお酒を飲まなくていいのだけど、ただ少しリフレッシュしたい”といったときに炭酸水という代替の選択肢がでてきている」との見方を示す。

 この考えのもと「タグソバー」シリーズは、アルコール代替の選択肢を生活者に分かりやすく気づいてもらうための象徴的な役割を担う。

「ウィルキンソン タンサン #sober ス パイシーレモンジンジャ」(450mlPET) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「ウィルキンソン タンサン #sober ス パイシーレモンジンジャ」(450mlPET)

 「少しドライブをかけて生活者にいち早く気づいていただくために今回チャレンジした。『タグソバー』から“アルコール飲みたいときに炭酸水を飲んでもいい”という文化を醸成していきたい」という。

 「タグソバー」のコミュニケーションは、現在皆無に等しい認知度のソバーキュリアス文化を先導して浸透させるべく「Z世代からの支持が厚い」との見方から池田美優(みちょぱ)さんとemma(エマ)さんをCMキャラクターに起用して年間通じて積極的に展開していく。

 飲用シーンは、仲間と飲む賑やかなシーンを想定し「BBQグッズがその場で当たる」キャンペーンを5月31日まで展開している。

 一方、フレーバー炭酸水の「クラッシュ」シリーズは、炭酸水と有糖の炭酸飲料の間の市場に向けたもので4月26日に第1弾の「ウィルキンソン タンサン クラッシュグレープフルーツ」を新発売した。

「ウィルキンソン タンサン クラッシュグレープフルーツ」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「ウィルキンソン タンサン クラッシュグレープフルーツ」

 同商品は、女性やライトユーザーをターゲットに前身の「ウィルキンソン タンサン グレープフルーツ」を進化させたもので「フレーバーとしてはレモンの軸がある中で、よりお客様に新しいと思って手に取っていただくため果汁感と鮮度感を打ち出した見た目と中味に変更した」。

 炭酸水と有糖の炭酸飲料の間の市場については「無糖か有糖かという二分割された選択肢ではなく中間領域にトレンドがきていることはつかんでいる」とみており、この中間領域に対しては「有糖ブランドの『三ツ矢』からはやや甘さがある形で、無糖ブランドの『ウィルキンソン』は今までにない果実感が味わえる仕立てにしていく」。

 ブランド全体のコミュニケーションは、ブランドの顔となる「ウィルキンソン タンサン」を中心に据えて内容に変化を加えながら「刺激、強め。」のブランド価値を伝達していく。

菅田将暉さんを新たに起用し4月26日から放映している新TVCM「ココロに、刺激。」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
菅田将暉さんを新たに起用し4月26日から放映している新TVCM「ココロに、刺激。」

 具体的には「ウィルキンソン タンサン」のイメージカラーである赤色を際立たせていく。
 間口拡大策として4月5日から7月29日にかけて実施している「赤い刺激」キャンペーンでも、その名の通り赤色をテーマにしている。

 「赤のカラーで前向きに挑戦している企業やブランドとコラボさせていただいた。景品を通じていろいろな方に『ウィルキンソン』を知っていただきたい」と期待を寄せる。

 「刺激、強め。」を伝える施策としては、「工場できたて!強炭酸体感パック」が当たるキャンペーンを6月30日まで実施している。
 炭酸は開栓しなくとも時間の経過とともに炭酸ガスがペットボトルから抜け出てしまうことから着想した企画で「昨年も実施した。やり続けていくことが必要」と述べる。

 広告キャラクターには、菅田将暉さんを新たに起用し4月26日から新TVCM「ココロに、刺激。」編を放映している。

「ウィルキンソン タンサン」300mlPET - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「ウィルキンソン タンサン」300mlPET

 商品面では5月からEC先行で300mlPETを新発売する。

 この狙いについては「500mlだとガス圧があるうちに飲み切れないというお声をいただき、女性やシニアからは500mlだと少し大きく持ち運びしにくいといった不満点も浮上している。企業の接客時の利用も視野に入れている」と説明する。

 ECではラベルレスボトルが増加傾向にあり、今後は1ケース(段ボール)当たりの最適な入数などを模索していく。

 ラベルレスボトルは店頭販売を視野にブランド認知とのバランスを課題とする。

 「ECでは問題ないが、広がりつつある店頭での単品やマルチパックで展開する場合、ブランドの恰好よさが伝わりにくくなることを懸念している。現在、ガス補充が効率的なボンベのような形状を採用しているが、デザインを施し凹凸が少しでも生じてしまうとガス抜けしやすくなってしまう」という。

「ウィルキンソン タンサン」ラベルレスボトル - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「ウィルキンソン タンサン」ラベルレスボトル

 ラベルも剥がしさすさと環境負荷低減の両立を追求。

 現在、ラベルをボトルに被せてから熱で収縮させるミシン目のあるシュリンクラベルと、熱を使わずに糊付けするロールラベルの2種類を採用し「環境や品質によいということと剥がしさすさといったお客様のユーザービリティをどう両立させるかは課題と捉えている」。

 「ウィルキンソン」ブランドの21年年間販売数量は前年比5%増の3108万ケースを記録。「ウィルキンソン タンサン レモン」と大容量タイプがともに2ケタ成長を遂げたことが牽引した。今期は7%増の3320万ケースを目指す。

EU農産品  - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)