「サントリー天然水」販売数量が過去最高 ミネラルウォーターそのもののチカラが成長の原動力に

 サントリー食品インターナショナルの旗艦ブランド「サントリー天然水」は、複数のカテゴリーを展開する中で「サントリー天然水」本体(ミネラルウォーター)が力強さを発揮し21年に過去最高となる前年比6%増の1億2010万ケースを記録した。

 同ブランドは2016年に初めて年間販売数量が1億ケースを突破。18年以降は国内清涼飲料市場で年間販売数量No.1のブランドへと成長を遂げている。

 成長要因は、炭酸水・フレーバーウォーターなどとカテゴリーの領域を拡大したところによる部分も大きいが、一番の原動力は本体そのものの成長にあるという。

 取材に応じた平岡雅文SBFジャパンブランド開発事業部課長は「本質的な価値として水の安心安全と水源にこだわった清冽なおいしさを30年以上磨き続け、その価値伝達を昨年も細かい施策を含めてやりきることができた」と振り返る。

サントリー食品インターナショナルの平岡雅文SBFジャパンブランド開発事業部課長 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
サントリー食品インターナショナルの平岡雅文SBFジャパンブランド開発事業部課長

 容量別では、コロナ禍で家庭との接点を拡大できたという点で、2Lの役割が大きいと指摘する。

 「“小容量を購入してから大容量を購入する”というのが一般的な飲料の流れだが、天然水はその逆で大容量がまず家庭との接点となり、次に外で小容量が購入される傾向にあるため、コロナが収束してお客様が今まで以上に外に出られたときに、小容量サイズの天然水を選んで下さる流れが出来てきているのではないか」との見方を示す。

 2Lは、11年の東日本大震災以降に高まる備蓄需要にも対応。
 「震災以降、備蓄マインドが高まっていることも大きい。あるエリアで災害が起きると、そのエリアで瞬間的に需要が上がり、その様子が見聞きされることで全国的に備蓄マインドが高まっていく」とみている。

JANコードの統一で“運ぶ”チカラ強化(輸送イメージ) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
JANコードの統一で“運ぶ”チカラ強化(輸送イメージ)

 

 サントリーでは「いつでも、どこでもご利用いただける安心感がブランドにとって重要になる」との考えのもと、不測の事態の需要急増に対して、一昨年、水源別だったJANコードを一本化し、昨年から新工場を稼働させて供給体制を大幅に増強した。

 JANコードが登録されていないと流通できず、南アルプスの展開エリアで不測の事態が起きた際に阿蘇や奥大山の天然水を流通させるには、商品登録作業など時間を要する体制であった。

 JANコードの統一はこういったタイムラグを減らし、よりスムーズに供給することを可能とし“運ぶ”チカラの強化であるのに対し、“作る”チカラの強化としては「サントリー天然水」第4水源地・北アルプスを拠点とする新工場「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」が昨年5月に稼働した。

売場に並ぶ「サントリー天然水」本体(ミネラルウォーター)2L - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
売場に並ぶ「サントリー天然水」本体(ミネラルウォーター)2L

 リブランディングでは2Lのラベルも刷新。

 「サントリー天然水」ブランドの独自価値である「雪解け水のような冷涼で澄み切ったおいしさ」をアピールしたところ「家庭内に浸透した上で天然水本来の水源の心地よさを感じていただくという意味では一定の効果があった。また、2Lケース(段ボール)も刷新して水源訴求を行ったことも上手くいった」という。

 プラスチック削減というエコの観点と在宅需要の掘り起こしとして昨年10月に発売開始したラベルレス商品の購入も増加傾向にある。
 「サントリー天然水」(550ml)と「THE STRONG 天然水スパークリング」(510ml)をECチャネル中心に発売し「サントリー天然水」(2L)はAmazon.co.jp限定で発売している。

 今年も引き続き本体をコア商品と位置付けた上で領域拡大やイノベーションに取り組む。

製造以外のスペースを広くとった「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
製造以外のスペースを広くとった「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」

 「変わらず真ん中にあるのは本体であり、ここをしっかり育てていく。ただそれだけでは、少し寂しい真面目な印象になってしまうため、元気のある炭酸水市場や有糖のカテゴリーに広げながらブランドトータルでお客様との接点を増やしていきたい」と意欲をのぞかせる。

 本体の取り組みとしては、女優の石橋静河さんを継続起用したコミュニケーションを実施していくほか、5月14日に一般公開する「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」を起点に体験を通じたブランド価値浸透も強化していく。
 「北アルプス信濃の森工場で一番感じていただきたいのは、工場があるその土地の空気。製造ラインの見学もできるが、製造以外のスペースを広くとり、天然水が育まれる環境や山々の美しさ、空気のおいしさを体験していただきたい」と語る。

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