サントリー、沖縄に飲料の一大物流拠点を新設 人口と販売物量が増加傾向のエリアで安定供給強化 独自の先端技術導入し効率化も

 サントリーロジスティクスは4月、飲料の新物流拠点「沖縄豊見城(おきなわとみぐすく)配送センター」を本格稼働し、これにより人口・販売物量ともに増加傾向にある沖縄で安定供給強化を図る。

 同社はサントリーグループで唯一の物流機能会社としてサントリー製品を中心に物流業務を担い、近年はデジタルトランスフォーメーション(DX)化を推進して持続可能な物流に取り組んでいる。

 9日、開所式・取材会に臨んだサントリーロジスティクスの武藤多賀志社長は「昨今の沖縄は人口が増加しサントリーグループにとっても大変有望な市場だと考えている。我々の物量も年々増えていく中で、既存の外部倉庫では手狭になり3年ほど探してやっとこの地に開設することができた」と語る。

サントリーロジスティクスの武藤多賀志社長 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
サントリーロジスティクスの武藤多賀志社長

 沖縄豊見城配送センターは、大和ハウス工業が運営する敷地面積約3万平米の「DPL沖縄豊見城」の一角を占め、約8900平米の敷地面積を持つ。
 ここでは、サントリー食品インターナショナルの飲料のみを扱い、博多・大阪・東京から船便で運ばれる飲料を一手に集め那覇市・浦添市・糸満市を中心に配送していく。

 3か所点在していた既存の外部倉庫を1か所に統合したことに加えて、DXなどの先端技術を取り入れて効率化を図り、トータルの保管能力も最大28万ケースへと拡大した。

 1日当たり3万ケースの出し入れと、1日当たりのトラックの台数は繁忙期で50台、通常で30台を想定している。

 効率化の取り組みは、昨年11月に稼働した「浦和美園配送センター」を皮切りに各物流拠点で横展開を進めている。

 沖縄はその第2弾の位置づけで、将来に向けては「物流業界はいま非常に厳しく、燃料も原油高で高騰している。24年には時間外労働に対して年間960時間の罰則付き上限規制が適用され、人手不足の課題もある。持続可能な物流を実現するためにDXを使い作業効率性のアップを図る」と青写真を描く。

トラックが駐車して貨物の積み下ろしをする場所(バース)と事前準備された貨物 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
トラックが駐車して貨物の積み下ろしをする場所(バース)と事前準備された貨物

 沖縄で取り入れた効率化の代表例としては、センター内でトラックが駐車して貨物の積み下ろしをする場所(バース)を予約するシステムがまず挙げられる。

 バース予約システムは、トラック乗務員が空き時間を確認した上でスマートフォンからの事前予約を可能とする。一方、倉庫オペレーターは計10か所あるバースの中から入場バースを決定する。これにより車両到着前に貨物を準備することができトラック待機時間と倉庫荷役負担を低減していく。

 「荷下ろし作業効率を約20%削減し、トラック1台あたりの作業時間を約10分短縮できる」と説明する。

 貨物の事前準備はこれまでも行われてきたが担当者の力量によるところが大きく、人手不足で即戦力が求められる環境が後押ししてシステム導入によるスキルの平準化を図った。

 サントリー独自の技術としては、バース予約システムをはじめとする各種の業務システムが統合WMS(倉庫管理システム)と連携している点で、統合WMSを操作するだけでバース予約システムなどの各種のシステムが利用できるようになっている。

360°撮影できるドライブレコーダーを装備したフォークリフト - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
360°撮影できるドライブレコーダーを装備したフォークリフト

 フォークリフトの安全性維持にも先端技術を導入する。
 フォークリフトの爪を動かしながらの運転は爪が貨物に刺さるなど汚破損・労災事故の原因となり、サントリーでは1つの動作を終わらせてから次の動作に移ることを徹底。このため事故は皆無に等しいというが、その安全性を今後も効率よく担保するものとして富士通と共同開発したフォークリフト操作のAI判定システムを導入する。

 これまでフォークリフト操作については360°撮影できるドライブレコーダーを装備して加速度やハンドル操作などの状況を教育指導役が確認することで安全品質の向上や可視化に取り組んできたが、その映像確認に人手と時間がかる点や評価が曖昧な点が課題となっていた。

 今回、AI判定システムを導入することで、チェック作業にかかる時間を短縮し評価基準の標準化・均一化を図っていく。

 なおサントリーは沖縄で60年以上ビジネスを展開。「飲料は与那城ベバレッジ社(現・サントリーフーズ沖縄)が1954年に設立されてスタートし、お酒は1961年に沖縄寿屋(現・沖縄サントリー)からスタートしている。商品が徐々に増えていく中で、我々サントリーロジスティクスとしてはそこに対応して安定供給につとめないといけない」と身をひきしめる。

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