食品界、スタートアップ活用し事業拡大 PBF、培養肉、植物肉に照準

食品会社がスタートアップ企業との取り組みを通じて新規事業を展開する動きが目立ってきた。コロナの影響が長期化する中、スタートアップ企業との連携により新ビジネスを構築しようというもので、提携関係から一歩突き進み資金提携に至るケースも増えてきた。一方、スタートアップ企業も食品メーカーとの連携により既存事業を成長軌道に乗せ、将来の道筋につなげたいという思惑があるようだ。

新規事業の的はヘルスケア領域や環境領域、ECビジネス、大豆ミート、培養肉などのプラントベースフード(PBF)など多岐にわたっているが、ここ数年は代替肉や植物肉、培養肉などが多くを占めている。

世界的に高まる動物性たんぱく質の需要やその生産に伴う環境負荷などを背景に、植物肉や培養肉など代替肉が注目されている。さらにサステナブルな食への関心が高まる中で、プラントベースフードの世界市場規模は2030年には約18兆円に到達するとも言われ、2030年における3大代替プロダクトは代替ミルク、代替肉、代替卵であると予測されている。

カゴメは、昨年4月にスタートアップ会社のTWO社と業務提携契約を結び、プラントベースフードの開発を進めてきたが、今年1月には資本参加に踏み切り、3月から両社で共同開発したプラントベースエッグ「エバーエッグ」を使ったオムライスの「2foodsプラントベースオムライス」の販売を開始した。カゴメの山口聡社長は、業務提携から資本提携に発展した背景について「昨年の提携以降、相当密に連携してきた。商品開発のスピードを上げるには、より強い関係になったほうがよいと判断し出資に至った」と説明。今後は第2弾、第3弾商品も計画している。

味の素も3月に培養肉の開発・製造を手掛けるスタートアップのスーパーミート社に出資し、同社が2年以内に予定している培養肉の商業化に向けて支援するとともに、培養肉に関連する新技術・素材の開発を進めていく方針。

スタートアップ企業との連携を早くから実施してきた企業もあれば、新規事業として組織改革を行ったばかりの会社もあり、対応には温度差があり、提携や資本参加のほか、共同プロジェクト・ファンドへの参画やオープンイノベーションの手法を取り入れる企業もある。

日清食品ホールディングスは今年1月に植物肉開発で業界をリードするDAIZ社へ出資。プラントベースの「カップヌードル」など、植物由来の原材料だけを使用した即席麺の開発や、最新の完全栄養食メニューにおける植物性たんぱく質の利用拡大などを通じて新たな食の創造に取り組んでいる。

コロナを契機に新しい技術や独自のアイデアを持つスタートアップ企業と連携することで、新たなビジネスモデルに発展させようとする動きもあり、ビール系など多くの企業がチャンスを狙っている。

 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)