レギュラーコーヒー市場が18年から右肩上がりで推移している。インテージSRI+データによると、特に20年はコロナ禍の外出自粛で家庭内需要を取り込み前年比10.9%増と大幅に拡大した。21年は、多くの嗜好品カテゴリーが大きく伸長した20年の反動を受けて総じて前年を割り込む中、レギュラーコーヒーは1.1%増(574億7千万円)と続伸した。
この中で、構成比は大きくないものの、20年から急伸しているのは豆カテゴリーで、19年まで微増で推移していたのが20年に25.1%増、21年に19.9%増となり、2年連続で二ケタ増を記録した。
この急拡大には、コロナ禍の巣ごもりによる家庭で過ごす「おうち時間」の増加が背景にあるとみられている。
インテージ市場アナリストの木地利光氏は「家庭で過ごす時間が増えたことで『手間がかかっても、品質の高いコーヒーを飲みたい』という需要が高まっているようだ。豆の挽きから抽出まで全自動のコーヒーメーカーが普及してきたことも市場を拡大させる要因となっていると推察される」との見方を示す。
このトレンドと同じ動きをみせたのはUCC上島珈琲の「香り炒り豆」と「ゴールドスペシャル」の炒り豆商品で、中でも「ゴールドスペシャル」の炒り豆商品は昨年、二ケタ成長を果たした。
これには「昨年実施したブランド力強化に向けたコミュニケーションにより、焙煎へのこだわりなどがお客様に伝わった結果と考えている」(UCC上島珈琲)。
キーコーヒーも豆商品が拡大したとみられるが、豆商品のみならずレギュラーコーヒー全般で高い伸びとなった模様。「レギュラーコーヒー全体では伸びているが、われわれとしては豆だから伸びたとか粉だから伸びたというようなデータにはなっていない」(田中正登志R&Dグループグループリーダー)という。
21年に22%増と大幅に拡大したのは、ネスレ日本が手掛けるスターバックス家庭用商品のレギュラーコーヒー。
「基本的に全商品で高い伸びをみせているが、ひときわ伸びているのはレギュラーコーヒーの粉と豆。在宅時間が長くなり、カフェで飲める味わいを簡単にご自宅で飲めるのが重要であると受け止めている」(古山裕巳飲料事業本部コーヒーシステム&スターバックスCPGビジネス部部長)と説明する。
小川珈琲の豆商品は前期(8月期)、この伸びを上回る約30%増を記録。今期の出足も30%増の同水準で推移しているという。
豆カテゴリーの拡大を受けてか、AGF社もECで展開している「煎」ブランドで昨年9月にレギュラーコーヒーの豆商品と粉商品を発売して好スタートを切った。
特に豆商品の引き合いが強く、この要因についてAGFの布田明日和ECビジネス部商品開発グループ主任は「そもそもEC市場は店頭と比べてレギュラーコーヒー、特に豆の比率が高い。豆ユーザーは豆を買い回る傾向にあるが、店頭では豆の商品数が限られているためECに流れており、その潮流に乗ることができた」と説明する。