防災食品 法人はノンアレルギーが条件 個人向け、望まれる通年販売

自然災害が相次ぐ中で防災への意識が高まっており、コロナ感染が蔓延し不安感が募っていることも原因となっている。そのため防災食品は自治体や企業向けの法人需要および防災食を日常的に消費しながら使った分を買い足すローリングストック用の個人需要も比較的安定した伸びを保っている。

法人向けは自治体や企業、学校、病院、養護施設などが主要チャネルで、防災卸や防災用品商社を通して販売される。自治体は3年、5年計画で予算を決定し、それを1年ずつに振り分けるため、ほぼ毎年、防災食が入れ替わる。一部の自治体では、昨年は新型コロナ対策に予算があてられ防災食には厳しい環境だったが、小規模ながら地震が多発したために駆け込み需要が発生し、ここにきて需要は戻ってきたと言う。企業向けも地震が起こるたびに駆け込み需要が発生しているが、一般企業はテレワークが増えたために社員数や営業時間が減り、防災食にも影響が出ている。

学校や病院、高齢者施設ではノンアレルギー対応の防災食が需要のカギを握っている。特に学校では子どものアレルギーが増えており、食物アレルギー対応の方針やマニュアルなどを策定して事故防止の取り組みを強化し、防災食でもノンアレルギー対応のニーズが高い。また、不特定多数の防災食が配られる避難所でもノンアレルギーが大きな決め手となっている。高齢者施設では咀嚼配慮が必要な人に向けた柔らかな防災食の需要が高い。

ここにきて法人向けでも備蓄用の長期保存食とローリングストックの使い分けを提案する防災食専門メーカーがでてきた。大規模の災害では数日間で物流が回復する可能性は薄く、そこで最初の3日分はローリングストック食品、残り3日分は長期保存食があれば1週間しのげるというもので、きめ細かな提案が求められている。

個人向けの防災食はスーパーやドラッグストアなどで購入するケースと、ネット販売で購入するケースの二通りがある。年間を通じて、店頭で防災食コーナーを常設販売している店は少なく、今でも東日本大震災が発生した3月11日前後と、9月1日の「防災の日」を含む1週間あたりの二つの山に偏っている。ネット販売も春秋のキャンペーン時期に需要が集中しており、ここでも地震が起こるたびに需要が跳ね上がるため安定感はなく、個人向けの防災食が通年で売れるようになるには、まだ時間がかかりそうだ。

 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)