コーヒーの香りに永遠の命を ドリップバッグの酸素減らし賞味期限延長 サザコーヒー

茨城県ひたちなか市を拠点とするサザコーヒーは、昨年10月に新工場を稼働して焙煎生産能力を従来の約4倍に高めたほか、製造プロセスに工夫を施しドリップバッグコーヒー「サザカップオン」の酸素濃度を0・8%に抑えることに成功した。

これにより賞味期限を1年から3年への延長を可能に。酸素濃度は包装直後に測定したもので、包装時に少しでも酸素があるとそれを豆が吸収し、しばらくすると酸素濃度自体は低くなるものの劣化は進んでしまうという。そのため包装直後の酸素濃度を抑えることが肝となる。

取材に応じた鈴木太郎社長は「コーヒーの香りに永遠の命を吹き込むことを目標に掲げている。ほかではあまりやられていないと思うが、コーヒーの劣化を防いで香りが長続きするようにすれば価値は上がる。賞味期限3倍は価値が3倍になったのと等しい」と語る。

光を通さないアルミ袋を採用した「サザカップオン」の製造ライン(サザコーヒー) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
光を通さないアルミ袋を採用した「サザカップオン」の製造ライン(サザコーヒー)

包材にも工夫し、光を全く通さないアルミ袋を採用している。

この取り組みに加えて、鈴木社長が社会人枠で受験し20年に入学した筑波大学大学院の農産食品加工研究室では「コーヒーの油そのものは悪くならないこと」などを突き止めた。現在、「焙煎後のコーヒー豆の保存方法と品質変化」について論文を執筆し、3月に修士課程を卒業して2月に一般枠で博士課程へ移るための試験を予定している。

新工場の稼働で焙煎生産能力に加えて焙煎の質も向上させた。新工場には日本初となる世界最新式「プロバット」60㎏釜2台と米国製「ローリング」少量釜1台を導入。これに加えて、在庫スペースや作業スペースも格段に広がったことで、小売商品の拡充など「とにかくこれまでできなかったことに取り組んでいる」。

世界最新式「プロバット」は、同社にある2台を含めて日本に3台にしかない最新式のもので、良質なファンが導入されており釜の中で減圧されるのが大きな特徴。減圧によってコーヒー豆が膨らみやすく香り立ちが強化される。豆の種類に合わせて0・1度単位で正確に温度設定できるのも特徴で、これにより再現性が高くなっている。

「当社ではこれまで本社にある45㎏釜では生豆の状態でブレンドしてから焙煎(プレミックス)していたが、新工場では豆ごとに焙煎プロファイルを変えるアフターミックスで行っている」と説明する。

最新式の「プロバット」は一般的な焙煎機と比べて、鉄の使用量が圧倒的に多く、その分、重く熱を溜め込む能力が極めて高い。そのため現在は「一度アクセルを踏むとなかなか止まらない。現在、上手く使いこなすべく蓄熱や焙煎プロファイルの把握に努めている」という。