昨年末から異例ともいえる扱いで報じられたのが、酪農乳業界の処理不可能生乳問題だ。
▼学校給食が休みに入る年末年始期、生乳需給の緩和により処理不可能(廃棄)生乳の発生が危惧されたが、官民挙げた消費拡大の呼びかけや、牛乳乳製品の需要喚起に向けた製販の取り組み、何より生活者の協力により、約5千t(1Lパック500万本分)という処理不可能乳の発生は回避された。
▼ただ「第一の山場であった年末年始、処理不可能乳を発生させることなく乳製品への処理を進めることができたが、危機的な状況は継続している」(業界団体トップ)というように、生乳生産が堅調に推移する一方、コロナ禍により業務用乳製品の需要は低迷。今後も需給のアンバランスな状況が続く見通し。
▼今回の問題は、乳資源の安定確保に向け、官民一体となった取り組みにより、生乳生産が増産に転じるなかでのコロナ禍、という想定外の事態が原因だが、結果的に、牛乳乳製品に対する社会的関心は高まった。禍転じて、ではないが、今回を機に、継続的な消費拡大につなげていくことが大切だ。