第6波 酒税改正 消費変化――三正面作戦挑むビール業界 大手4社が方針

税率一本化へ 新ジャンルの立ち位置は

新年度に入ったビール業界。6日には大手4社が相次ぎ会見し、今年の事業方針を明らかにした。業務用不振はいつまで続くのか、酒税一本化を見据えた戦略は、変化する生活者意識や適正飲酒への取り組みは―。問われる業界の諸課題に対し、各社の首脳が認識を表明した。

「秋以降は感染者数減少により酒類の提供規制が徐々に緩和され、消費回復の兆しもみえてきた。消費者の行動や意識の変化が顕在化し、多様なニーズに対応する力が問われる一年だった」(アサヒビール・塩澤賢一社長=写真左上)。「(コロナ禍が)多大な影響を及ぼし、ビール類の出荷は20年をも下回った。また、酒税改正でビール類の増減税も進む。そうした大きなファクターがあるなかで業務用が苦しんだが、家庭用についてはビールが活性化している」(サッポロビール・野瀬裕之社長=同左下)。

21年のビール類市場は、引き続き新型コロナウイルスの影響や酒税改正の影響から95%程度で着地。17年連続の減少となった。飲食店や業務用酒類の苦境が続く一方で、家飲み定着と減税効果の恩恵を受けた缶製品ビールの活性化が進んだ。

キリンビールでは、「一番搾り」など主力ブランドがけん引したビールカテゴリーが6年ぶりにプラス着地した半面、増税の影響から新ジャンルは苦戦。1日に就任した堀口英樹社長=同右上=は「市場は大きな転換点にある」と語る。

26年にかけて酒税が段階的に一本化されるビール類。缶チューハイなどRTDの税率も引き上げられる。「味はほぼビール」「でも価格はお手頃」を武器に拡大してきた新ジャンルの存在意義が問われることになるが「ブランド力を高めることで、『本麒麟』がいいから飲んでいただけるお客様のロイヤリティがついてくる。今後も新ジャンルの領域を強化していく」(堀口氏)との姿勢をみせる。

「酒税区分が一本化されても、価格差は残る。新ジャンルの中でトップブランドに位置していればそれなりの数量と支持はいただける」(サントリービール・西田英一郎社長=同右下)、「リーズナブルビール類は一定程度残る前提でマーケティングを組み立てている。ビールをより良いものにする中で、お客様が飲む気分の違いを作っていく。そこが重要だ」(サッポロビール マーケティング本部・武内亮人氏)など、各社とも追い風を受けるビール本来の価値をさらに追求する一方、それとは異なる新ジャンルやRTDの独自価値にも磨きをかけるべく、引き続き重点投資を行う方針だ。

昨年はコロナ禍での健康意識拡大や生活スタイルの変化を背景に、ノンアルコールや微アルコール商品も成長。まだ母数は小さいが、今期も各社は二ケタ増を狙う。

「(ノンアル商品は)運転など酒が飲めないときの代替品だけでなく、自分の体調や健康管理に気を配り、積極的に取り入れるなど、自律的にお酒と向き合うライフスタイルが広がっている」(塩澤氏)とみるアサヒビールでは、飲む人、飲まない人が互いに尊重する「スマートドリンキング」を提唱。電通デジタルと共同で「スマドリ株式会社」を設立し、非飲酒層向けのマーケティングに力を入れる。

ノンアルに限らず、糖質ゼロの「パーフェクトサントリービール」の好調にもみられる通り、ビール系飲料でも健康性や機能性がより意識されるようになってきている。「(「パーフェクト~」は)お客様の期待を超える中身により、リピート率も高水準で推移。さらなる成長余地を感じる」(西田氏)。

回復「7割」目指す業務用

ここにきて新型変異株の感染急拡大から、再び不穏なムードが広がる外食業界。第6波の様相もみせる中、料飲店向けの業務用酒類の不振はいつまで続くのか。コロナ前の水準に戻ることはあり得るのか。

「あくまで個人の見解だが、戻ることがあるのかはクエスチョン。みんな外に出る機会をなんとなく失ってしまっている。完全に戻るのはしんどいと思うが、だからこそさらに一緒に手を携えていきたいという思いは強いし、飲食店に対して新製品や新しいサービスを提案していきたい」(同)。

「今年の業務用は19年比7割程度で考えているが、(先行きが読めず)なかなか予算が組みにくいところがある」(アサヒ塩澤氏)、「このまま感染が増えると業務用は厳しい状況が予測されるが、方針をぶらすことなく料飲店に寄り添って対応していく」(キリン堀口氏)、「昨年9月以降の業務用は19年比7~8割。今年もそのくらいで推移するとみている。政府、自治体に方針をしっかり定めていただき、感染対策をしながら対応できればなんとか戻りが見込めるのではないか」(サッポロ野瀬氏)など、各社とも飲食店への支援を継続しながら、業務用についてはコロナ前の7割程度までの回復を目指している。

各社の実績と計画(ビール大手4社)
各社の実績と計画(ビール大手4社)