2022業界天気予報 食品界 アフターコロナの雲行きは

虎穴に入らずんば虎子を得ず 新たな地平へチャレンジ果敢に

今年こそは、2年前までの活気を社会に取り戻すことができるのか――。期待と不安を抱えながらの船出となった2022年の食品業界。本紙新年号吉例・元祖「業界天気予報」では、今年も担当記者の知見と独断で各カテゴリーの天気をずばり予想。業界の空模様をお伝えする。

人々の意識や生活スタイルの変化が進んだコロナ下で、2度目の新年を迎えた。生活者のさまざまな行動変化を背景に新たな消費環境が定着する一方、アフターコロナを見据え出口戦略を探る動きも活発化する。ただコロナ変異株が世界的に不気味なまん延を続けるなか、今のところ感染状況が落ち着いている日本も、逆戻りへの懸念を払拭しきれない年明けである。

今回、本紙が「はれ」または「快晴」を予報した品目・業種は26。昨年から減少し、全体の4分の1程度にとどまった。

大きな影を落としているのが、原料価格やエネルギーコストの上昇だ。とりわけ穀物相場の高騰から、油脂メーカーや製粉業界では苦境が強まる。

家庭用油はこの1年間で4回の価格改定を実施。やはり価格水準が大幅上昇する業務用油では、コスト構造の激変を背景に通常の油よりも長く使える長持ち油や、料理のおいしさや作業性改善につながる機能性油脂が脚光を浴びる。

また中国の需要増大や北米での作柄悪化を受け、輸入小麦の政府売渡価格は昨年に11年ぶりとなる大幅な引き上げが行われた。小麦粉やプレミックス、パスタ、乾麺など関連製品の価格改定が相次いでいる。パン粉もコスト上昇分の価格転嫁が今後のカギになる。

油脂や小麦などと並ぶ基礎原料では、砂糖も海外粗糖相場の高騰や円安の影響から昨年は3回の価格改定を実施。さらに業務用塩は今春から8~10%以上の値上げに踏み切るほか、海上運賃のコスト高が収まらなければ家庭用塩でも価格改定は不可避となりそうだ。

このほかにも、コーヒー、はちみつ、鶏卵、ごま、練り製品など多くのカテゴリーが、コスト上昇の荒波の真っただ中にある。

「衣・食・住」に変化の風

今年はコロナ完全終息への祈りとともに、「その後」の需要をいかにつかむかに、各業界とも腐心することになりそうだ。

コロナ下では、たとえば仕事帰りに同僚と一杯、といった場面がなくなり、居酒屋チェーンを筆頭に外食業界は打撃を受けた。これを得意先とする業務用食品や酒類を扱う企業も同様。家庭用商品と明暗を分けたケースが目立つ。

あるいは身なりを整えて職場に出たり、着飾って人の輪に加わったりといった機会も減り、人と人が関わるこれらのシーンにフォーカスしてきた業種も苦境に追いやられた。「衣」関連でも、紳士服業界はその最たるものといえる。

人とのリアルでの関わりが減った分、一人で、あるいは家族と過ごす時間や場所に目が向くようになった。世間的な評価や見栄にとらわれず、自分が本当に好きなモノやコトを楽しみたいという欲求も高まった。

これによる恩恵を受けているのが、「食」と「住」に携わる業界だ。都心のマンションをはじめとする不動産市場は買い手が引きも切らず、オリンピック終了後も価格の上昇基調に終わりが見えない。

われらが食品業界に目を移せば、高止まりを続ける内食ニーズ、健康志向、プチ贅沢といった生活者の志向変化に寄り添った提案に余念がない。内食需要の高まりを受け、家庭用では調味料類やプレミックス、パスタなどがまだまだ活況を呈しそうだ。例年の本欄で「はれ」常連組の健康・機能性食品やナッツ類、乳酸菌飲料、オリーブオイルといった健康イメージの高い食品も、引き続き好天が見込まれる。

「巣ごもりで『いちばん近くの店がいい』という新しい価値観が生まれた。そこにアフターコロナの人流からくる従来の需要も取り込むことで、成長することができる」(ローソン 竹増貞信社長)。

昨年は回復ペースがもたついたコンビニ業界も、コロナ後の新ニーズを虎視眈々と狙う。冷凍食品、日配、日用品など、従来はスーパーでの購入がメーンだった商材の品揃えを強化すべく、売場の改革も進んでいる。

今年は寅年。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の故事もある。押し寄せる多難にも一人ひとりが果敢にチャレンジし、食品界の新たな地平が切り開かれる年となることを願う。

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