業界リーダーアンケート 景気回復へ期待強まるも…どうなる値上げ、変異株

2020年、21年と2年続けて社会へ、そして日々の生活へ、コロナ禍は多大な影響をもたらした。ただ、未知の出来事に右往左往した1年目に比べると、企業も消費者もその対応の仕方に慣れ、否が応でも日常にコロナを取り込んだ形での生活が当たり前となった。緊急事態宣言から解放された昨年最後の四半期は人の流れも次第に戻り、変異株への不安は残しながらも、前年の年末に比べると新たな年への期待もふくらんだ。とはいえ、コロナ禍に対し予断を許さない状況であるのは変わらず、従前からの少子高齢化・人口減という社会問題に再び向き合うとともに、原料高やコスト高に起因する値上げという新たな課題への対処が避けられない年明けとなった。こうした中、今年も業界トップアンケートを実施、約100件の回答が寄せられた。
※ご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。

①今年の景況感

スーパーは明暗が分かれてきた
スーパーは明暗が分かれてきた

「良くなる」が3倍に 不透明感は根強く

今年もまずは「今年の景況感」について質問した。選択肢は「良くなる」「悪くなる」「現状維持」「見通せない」の4つ。昨年はコロナ禍という未曽有の事態が予想以上に長期化したことに対する不安を象徴するように、「見通せない」という回答が約半分に達した。

今年も「見通せない」との回答が37%と最も多かったのは確かだが、前回に比べると10ポイント以上低下した。その一方で目立ったのが、「良くなる」が11%から32%と大幅に伸びたこと。「悪くなる」(11%)は前回から7ポイント、「現状維持」(20%)は同じく3ポイント下がった。

「過去2年の反動から、景況感は良好であると期待される」との言葉通り、コロナ禍で抑圧されたこの2年の反動が消費に向かい、景気が活発になることへの期待も込めた結果と思われる。実際に緊急事態宣言が解除された昨年10月以降、年末にかけて飲食店や交通機関などにおいて人の動きが盛んになった。

「外食においても『ちょっといいものを楽しみたい』という、高単価の消費行動につながる期待がある」(酒類)、「行楽や行事が増え、おにぎりなどを食べる機会が増えると予想する」(海苔)といった前向きな見方が多い。このほか「健康意識の高まりもあり、業界は良くなると考えている」(健康食品)というように、コロナ禍における意識の変化が新たな需要を生み、その継続に期待する声も聞かれた。

「悪くなる」との回答は減少したものの、「外食の再開で業務用需要が高まるも、原料費やコロナ禍の長期化による影響は続いている」(調味料)、「値上げにより、消費者心理が冷え込む」(菓子)と原料高への不安は強まっている。物価が上がっても賃金の上昇が期待しにくいため、「購買動向が好転するとは思えない」(調味料)。また、ワクチン効果などで回復への期待を込めながらも、少子高齢化や競争激化などのトレンドは変わらず、引き続き厳しい環境が続くという答えもあった。

「現状維持」の回答においても、消費回復を予想しながら「相場の上昇、エネルギー・資材コストの高騰が続くようであれば、復興需要を押しつぶす懸念がある」(製糖)、「消費先行層と防衛層に分かれると見ており全体として現状維持だが、エネルギーや原材料の高騰などによりやや悪化する可能性もある」(畜肉)などマイナス寄りの指摘もみられた。

最も多かった「見通せない」に関しては「コロナ禍の行方、米国と中国の関係などの不透明な要素が多い」、「再び感染が拡大する可能性は排除できない」などコロナ禍の行方に加え、「賃上げ対策を政府がどうするかによる」といった回答が寄せられた。1年前は先行きの見通しを遮っていたのはコロナだったが、今年は値上げや国際情勢など新たな問題が状況をより複雑にしている。

②コロナ禍の影響は強まった?

2021 コロナ禍が自社に与えた影響 2020年比

1年目ほどでは… 「慣れ」と対応力

コロナ禍2年目となり、その影響力は前年(2020年)と比べ増したのか。1年前はコロナの影響について質問し、8割が「大いにあった」と答えた。今回は前年と比較した影響度合いをたずねたところ、コロナ初年度の「20年ほどではなかった」という答えが半数を超えた。「同じ程度」と答えたのが3分の1で、「より大きかった」は1割強だった。

「20年ほどではなかった」理由としては「20年はコロナの正体が見えなかったが、21年に入り徐々に分かってきたので対策を講じることができた」(海苔)、「さまざまな対処法や施策等を実行に移し、影響を最小限に抑えることができた」(製糖)、「自粛に慣れ、消費行動も冷静だった」(アイス)、「良い影響も悪い影響も弱まった。社会が慣れてきた」(惣菜)などコロナに対する「慣れ」によって、対応力が強まったためと考えられる。

「日商が前年を超える月が多くなった」(コンビニ)、「景況感が徐々に持ち直してきている」(乳業)、「21年に入っても大きな反動減はなく、高止まりが続いた」(ふりかけ)など回復への兆しも感じられる。

「同じ程度だった」は「外食の厳しい状況は続いたが、家庭向けを強化し前年並みの売上を確保できた」(酒類)、「21年は反動により、20年と逆の構造となった。全体のバランスがとれ、結果として前年並みを維持した」(調味料)などプラスマイナスが相殺され、同程度で推移した企業も多かった。

一方、「より大きかった」については、「緊急事態宣言等の長期化で観光業を中心に甚大な被害を受けたことで、飲食店や土産物品の消費が大幅に落ち込んだ」(製糖)、「商業施設内の店舗は休業日が増加し苦戦した」(小売業)、「コロナの長期化で観光業界を含む外食産業全体が一段と委縮した」(乾物)など、自粛期間が長期化したことで前年より大きな影響を受けたところも少なくない。

また、「コロナ禍による外食産業の構造変化により、従来と異なる領域で製品需要が増加した」(機械)、「小売用は反動減で伸び悩んだが、惣菜市場が回復し業務用が伸長した」(調味料)など前年よりもプラス効果が大きく出た業種や企業もある。

③テレワークやデジタル化への対応

テレワークがさらに浸透した
テレワークがさらに浸透した

働き方改革を促進 リアルの重要性も

すでに1年前、つまり20年末の段階でテレワークは浸透し、在宅勤務やリモート会議も頻繁に行われるようになっていた。21年はそれらがより日常的なものとなり、緊急事態宣言が解除された後もテレワークは継続され、コロナ前から進めていた働き方改革を実現する一助となった。

テレワークやデジタル化への対応が「進んだ」とする回答が4分の3を占めた。「現状維持」との回答も、20年の早い段階で移行を済ませたものが多い。

貿易に携わる企業では世界の生産地と顧客をオンラインで結ぶイベントを始めるなど、新たな商機にもつながっている。ただし、大手のような分業化が困難な中小企業の場合は、「一部だけをテレワーク化するのは難しい」との声もあった。「コミュニケーションを深めるには面談が重要」(日配)と改めて「リアル」の重要性を認識したという意見を耳にすることも多い。今後はよりハイブリッドな対応がこれまで以上に求められていきそうだ。