九州小売流通 勢力図塗り替え加速か 業態超えたバトルロワイヤル激化

昨年から起こったコロナ禍によって、昨年の九州小売企業における業績は大きく改善した。巣ごもり消費や内食需要の増加によって過去最高益となる企業も多くみられた。しかし今期はコロナが一巡した影響が大きく、好調をキープしていた小売企業はおおむね売上を落としている。

コロナ禍での巣ごもり需要で衛生用品などを買い求める顧客が増えて大きく売上を伸ばしたドラッグストアでは、今期に入り既存店を中心に売上が下降しているため、既存客の奪い合いに必死だ。コスモス薬品が出店の基軸を関東圏に置いているため、今がチャンスと九州エリアでの巻き返しを図るべく出店攻勢をかけている。

ドラッグストアモリや、ディスカウント業態ではあるがサンドラッグを親会社にもつダイレックスなどは今後もコロナ禍で衛生用品の需要が底堅く伸びる判断をしてドミナントによる出店が過熱している。テナントによる生鮮品や食料品コーナーの拡充にも力を入れており、衛生用品以外でも生活必需品のアイテム数を増やし、消費者が購買できるアイテムの受け皿を広げることで顧客の取り込み策を急ピッチで進めている。坪効率が高く経費率を安く抑えることができることから仮に少ない客数と単価であってもローコストオペレーションでの運営を実践できるのが強みだ。

対する食品スーパーではイオン(マックスバリュ)のような全国チェーン型、熊本のマルエイや鮮ど市場、宮崎のマルイチのような地域限定型、ハローデイのような売場の見せ方にまでこだわり、惣菜やベーカリーを加えて生鮮部門を50%以上の構成比にして購入単価の向上を図る特殊型などがある。

一般的なスーパーでは生鮮部門の販売構成比が30%以上とされているが、設備投資や高度の鮮度管理が必要とされ、その維持にコストがかかってしまう。また店舗運営の柱となる生鮮の知見に長けた人材をそろえなければならず、出店を大幅に増やすことに向いていない。経費率の違いによりディスカウントやドラッグとの価格差が開いてしまうため、この差を埋める差別化策を講じる必要があるが、出店戦略や売場施策などの課題が山積する中、スーパー側では有効な手立てを打てていないのが現状となっている。

一方、コロナ禍で緊急事態宣言による営業自粛の指導を受けなかったホームセンターなども住宅関連の商品が好調だったことを受けて、集客率アップを高めるべく食品カテゴリーを増やす傾向がみられている。さらに巣ごもり需要の増加に応じて外出を極力避ける購買層がネットスーパーなどに依存する傾向も急増した。従来まで業態ごとで棲み分けを図ってきた相関関係が崩壊し、新たな競争の様相を見せ始めてきたといえる。

九州エリアでは各県の人口減に伴い小売市場のシュリンク化と、オーバーストアに起因する価格競争が継続するものと想定される。既存客の取り合いがよりヒートアップし、新規参入や他県からの域外組の参入が増える可能性もある。そういった業態の垣根を越えた戦いが続く中において、企業間における収益格差がより広がりをみせている。持久力のある企業は価格競争力を強めるのに対し、体力のない企業は防戦を余儀なくされる。企業の優勝劣敗による淘汰が進む中において、今回のコロナ禍を契機に流通勢力図再編の動きが加速することが予想される。