商戦短期化進む鏡餅 売れ残り回避へ流通の守勢強まる

良い年へ、願いを込めて飾る鏡餅。年末年始の帰省を自粛した家庭が多かった昨年は、自宅で正月を過ごす人が増えた大都市圏を中心に、新たな購買も広がった。ただ商戦は年々短期化が進んでいるという。背景には何があるのか。

「以前はクリスマス商戦が終わってからやっと売場を広げる店が多かったが、最近は11月の3週目くらいから本格的に売るようになってきた」。

こう語るのは、包装餅最大手・サトウ食品(新潟県)の佐藤元社長。商戦の前倒しはここ数年の流れだが、コロナ下で初の商戦となった昨年は消費動向が見通せず、売れ残りリスクを避けて早めの売場展開を仕掛ける流れに拍車がかかった。

「除夜の鐘が鳴れば鏡餅の商品価値はゼロ以下なので、なんとかしたいというのが販売側の考えだろう」と佐藤社長は推測する。

別メーカーの営業担当者も「お客さんも早めに買い物しているようで、例年だと12月25日ごろから迎える販売ピークが昨年は20日前後に早まり、28日ぐらいには店頭からなくなってしまった」と振り返る。「昨今はクリスマスが終わっても追加発注もなく、早めに売り切って正月ものに変える傾向がある」と説明するメーカーもある。

こうした流れは今シーズンもさらに加速。商戦開幕の前倒しで各社とも好調なスタートダッシュを切った一方、後半の失速を懸念する声も聞かれた。

かつては売れ残りをメーカーに返品する商習慣があったが、廃止された現在は流通側も需要予測をよりシビアに設定するようになってきたという。販売時期だけでなく商品の投入数や売場自体を縮小する動きも目立ち、流通側の守勢は強まっている。