恵まれた環境と伝統農法 自然との調和が生み出すアイルランド産乳製品

ヨーロッパの北西端に位置する美しい島、アイルランド。国土の半分以上を農地が占めるこの農業大国では、世代間で代々受け継がれてきた酪農でも長い伝統を持つ。

19年の生乳生産量は前年比5%増となり、79億8千万ℓに達している。日本に比べると人口は4%程度ながら、生産量では約1割上回ることになる。その多くは、世界で140を超える市場に供給される。同年には3万2千378tのチーズを輸出したのをはじめ、毎年40億ユーロ(約5千200億円)を超える乳製品を輸出している。

同国の乳牛は年間240日を牧草地で過ごし、与えられる飼料のうち95%は牧草。清浄な空気、豊富な雨の恩恵を享受するアイルランドは、牧草の生育期が北半球で最長である利点も備え、乳牛を育てるための理想的な条件とシステムがそろっている。

伝統を守りつつ、世界最高水準の食の安全とサステイナビリティの向上を目指すアイルランドの酪農農家は、大半が家族経営。こうした酪農場は国内に約1万7千も存在し、草原地帯の約4分の1を占める。国内の乳牛は150万頭。酪農家の平均飼養頭数は80頭、1頭当たりの年間集乳量は平均5千438ℓ。恵まれた環境とともに、代々受け継がれた職人技ともいえる酪農法が、世界で認められる品質と美味しさを生み出す。

「持続可能性と先進技術による高品質な乳製品供給で、世界で最も信頼される生産者になること」。アイルランドの食品・飲料の宣伝とマーケティングを担うアイルランド政府食糧庁Bord Bia(ボード・ビア)が掲げる、同国の酪農に対するビジョンである。欧州連合(EU)の厳しい食品安全基準を遵守し、国家的食品サステナビリティプログラム「オリジングリーン」に加盟する生産者や企業は、このビジョンの実現に向けた実践を日々積み重ねている。