過当競争で低収益の飲料ビジネス 「健康」へ舵切り成長のキリンビバレッジ 加速へ吉村次期社長が意欲

競争が激しい薄利多売の低収益事業とされる飲料ビジネス。その中で、キリンビバレッジは事業利益率を15年12月期の1.5%から19年12月期に9.1%へ伸長させた。20年12月期はコロナ禍の影響でやや足踏みしたものの19年に近い水準を維持した。

その立役者は16年3月から現職の堀口英樹社長で、無糖飲料や高い付加価値のプラズマ乳酸菌入り飲料などの健康領域に舵を切り、成長による利益創出を実現。社員との対話を重ねてシェア志向から売上高志向・利益志向へと組織風土も変えていった。

統合マーケティングも推進し、商品の開発段階からマーケティング・営業・生産が一丸となって販売先・販促・価格を決めるプロセスに変えて組織力を上げていった。

その堀口社長は22年1月1月付でキリンビール社長に就任。9月に急逝した故・布施孝之キリンビール前社長の意志を引き継ぐ。

11月9日、主要会社代表取締役の異動に関する記者会見を行ったキリンホールディングスの磯崎功典社長は「堀口は最終的にピシッと利益を出している人間なので、ビールについても非常に成熟したマーケットの中でいかに収益を出していくかを期待している」と太鼓判を押す。

堀口社長も「結果にこだわって経営をしていきたい」と語る。

時を同じくして堀口社長からキリンビバレッジのバトンを渡されるのは現・キリンホールディングス常務執行役員経営企画部長の吉村透留(とおる)次期社長。

吉村次期社長は、キリンビールの技術・製造担当を皮切りに、アンハイザー・ブッシュ社(米国)のロサンゼルス工場に駐在しビールの品質向上に貢献。

「ダイナミックな現場に単身乗り込み徹底して現場をまわり課題解決に貢献したことで多くのブッシュ社員から信頼を獲得。グローバルでの人脈を広げキリン商品の北米での立ち上げを成功させた」(磯崎社長)と評される。

以降は、キリンホールディングスの経営戦略に従事。ライオン社(豪州)に赴任しSCMの責任者としても実績を上げた。

ファンケルとの資本業務提携にも携わり、19年3月から21年3月までの2年間はキリンビバレッジ取締役を兼務し飲料の健康戦略にも関与していたことから白羽の矢が立てられた。

吉村次期社長は「変化に対応するためにはCSV経営を磨き上げるしかない。特に健康分野を先導していくことがグループの中で期待されている。キリンビバレッジのブランド力をさらに強めてヘルスサイエンス領域を事業のもう1つの柱に育成し新たな成長を実現したい」と意欲をのぞかせる。

そのために、協和発酵バイオやファンケルといったグループ企業の知見・素材を最大限に活用していく考えも明らかにする。

コストコントロ―ルに加えて売上拡大にもこだわる。

「いつまでもコストを絞っていては渇いた雑巾のようになってしまう。『午後の紅茶』や『生茶』といった主力ブランドの強化に加えて自販機の構造改革を進めていくことでトップラインを上げていく」考えだ。

吉村次期社長はキリンビール京都工場で社会人としてのスタートを切った。

「京都のミニ・ブルワリーの初代醸造技術者の一人だった。発酵の工程で出されるさまざまな香りを嗅いだときに、発酵の主役である微生物の研究にずっと向き合ってきたキリンの歴史を感じてすごく興奮したことを覚えている」と当時を振り返る。

座右の銘は「日々に新たなり」。ヘルスサイエンスに従事してきた経験を強みにしていく。

【略歴】吉村透留(よしむら とおる)=1964年6月8日生まれ(57歳)。1988年3月東京大学農学部卒業後、キリンビール入社。2001年3月生産本部生産統轄部企画担当部長補佐、04年3月福岡工場製麦・醸造担当部長、06年3月米国マサチューセッツ工科大学(海外MBA留学)、10年10月キリンホールディングス経営戦略部主幹、12年9月ライオン社(豪州)Kirin Strategy & Technical Liaison Director、14年4月キリンホールディングスグループ提携戦略担当主幹、17年3月グループ連携戦略担当ディレクター、19年3月常務執行役員経営企画部長兼キリンビバレッジ取締役、21年3月常務執行役員経営企画部長兼キリンビール取締役(現職)