ピュアと感動を追求するHARIOの独自開発体制とは? コロナで嗜好品にとどまらない「生活に豊かさや彩りを与える」可能性浮上

1921年10月30日に理化学用ガラスの製造販売で創業し、産業用ガラス製品、家庭用ガラス製品と業容を拡大してきたHARIO(ハリオ)社。

現在、祖業の理化学用ガラス事業をHARIOブランドの中核と位置づけ、事業の屋台骨としてコーヒー・ティー関連をはじめとした家庭用製品に注力している。

家庭用製品は、コーヒーサイフォンとプレス式ティーメーカーで成長の素地がつくられ、2005年発売開始した「V60透過ドリッパー」をはじめとするV型円すい形コーヒードリッパーで開花。サードウェーブコーヒーの波に乗り、世界の多くのトップバリスタに支持され、また、その様子がSNSで拡散されたことで一気に海外で浸透していった。

柴田匡保社長(HARIO)
柴田匡保社長(HARIO)

この動きはコロナ禍で加速している。

カフェで本格コーヒーを嗜んでいた層が家庭で手淹れコーヒーに挑むようになり、これに伴いドリッパー・サーバー・ケトルなどのHARIO製品への引き合いが国内外で強まっていった。中でもロックダウンの強制手段がとられた海外ではひときわ高い伸びをみせた。

このように製品が飛ぶように売れていく中で、新たな可能性も見出される。

取材に応じた柴田匡保(ただやす)社長は「これまでHARIOの製品は無くても生活に支障をきたすことない嗜好品と思い込んでいたが、コロナ禍で日本でも海外でも生活に豊かさや彩りを与えるものとして必要とされていることが分かり、とても有り難いことだと思った」と吐露する。

この発見をもとに、今後は生活者のライフスタイルに寄り添うことを強く意識してカテゴリーの枠組みにとらわれない開発を推し進めていく。

「ガラス製品でHARIOの特徴を出しつつ他の素材と組み合わせていく。手前味噌だが、ガラスを取り扱うのは相当難しく、ガラスとの組み合わせがHARIOらしさにつながる」との考えを明らかにする。

その原動力になるのが独自の開発体制となる。

「昔から受け継がれているやり方で、営業と製品企画の社員がタッグを組み、領域を特に設けずに生活全般をウォッチしながら新製品の開発に臨んでいる」と説明する。

製品展開にあたってはHARIOブランドも意識。

製造過程で発生する泡を残さないための泡きり剤は100%天然塩を使用する「HARIOの耐熱ガラス」
製造過程で発生する泡を残さないための泡きり剤は100%天然塩を使用する「HARIOの耐熱ガラス」

「HARIOはガラスの王様・玻璃王(はりおう)に由来し、会社や社員を表現する際には、ガラスのように透き通っているピュアな心を意識し、お客様に対してはブランドロゴと同色のピンクのバラのような感動を与えていきたい。そのようなことをブランドに集約していきたい」と語る。

社員同士のつながりを大事にし、HARIO社では全体会議と、あえて高級旅館に宿泊する社員旅行を年一回実施している。

「昨年からコロナで実施できていないが、社員が一堂に介し今期方針などを一泊二日で話し合う全体会議を実施している。そこで、意識を共有して方向性を揃える。また、社員旅行では、自腹ではなかなか行けない高級旅館に泊まることで、一流の食やおもてなしの体験の場としても活用している」と述べる。

HARIOガラスの原料は砂であり粉砕すれば地球に戻る環境にやさしいリサイクル素材であることに加え、製造過程で発生する泡を残さないようにするための泡きり剤は100%天然塩を使用している。

煙突のない古河工場(HARIO)
煙突のない古河工場(HARIO)

さらに古河工場では1972年からガラスの原料を電気で溶かし時代に先がけ環境に配慮した煙突のない工場で耐熱ガラスを生産している。

「昔から普通にやっていたことがSDGsの目標を当てはまっていたので、そのことをお客様に分かりやすくお伝えするようにしている。今後取り組むべきは、プラスチック樹脂やシリコンなども循環する完全循環型の製品づくりとなる。今はなかなかできていないが30年までには達成させたい」と意欲をのぞかせる。

柴田社長の座右の銘は「Man Always Lady First」。これはイギリスで体感した言葉で、困っている人に当たり前のように手を差し伸べる日常に感銘を受けたという。

「駅の階段でベビーカーや大きな荷物を持たれた方に自然と手を差し伸べる人間になれるよう心がけている」という。