味の素AGF社が今年2月に新発売した1ℓ用のスティック入りパウダー飲料「ブレンディ」ザリットルを通じ、静岡県のエコ活動が広がりをみせている。
「ブレンディ」ザリットルは、大型ペットボトル(PET)入りのお茶やコーヒーを持ち運ぶのは重たくてストックするにも場所を取ることから、その解決に向け、買いやすさや使い勝手のよさに主眼を置いて開発された。
これに伴いエコ設計にもなっている。
スティックの包材の一部に紙素材を使用し大容量PETに比べてプラスチック使用量が94%削減できることと、輸送効率が大幅に改善されて運搬車のCO2排出削減につながることから、行政・流通を巻き込んで協力の輪が広がっている。
静岡県と同県の小売店もその一例で、静岡県ではエコ活動として海洋プラスチックごみ防止と地球温暖化防止に注力。より多くの県民の参加・関心を促す起爆剤として「ブレンディ」ザリットルに期待が寄せられている。
静岡県では、海洋プラスチックごみ防止については、従来の3R(リデュース:発生抑制・リユース:再使用・リサイクル:再生利用)に新たな3R(リフューズ:断る・リターン:店頭回収・リカバー:海の機能回復の清掃)を加えた6R県民活動を2019年5月から展開している。

展開開始から2年あまりが経つが、県民への周知はまだまだというところ。そこへAGFからのアプローチがあり機運が高まりつつある。
「AGFさまが6R県民活動に関心を持たれて賛同して下さった。6Rのキャンペーンに賞品の提供もお願いしたところご快諾いただいた。6Rという言葉はなかなか県民に広がらず、6Rに触れたAGFさまの商品POPを小売店で見かけてもらうことが海洋プラスチックごみ問題を知ってもらうのに非常に効果的だと考えている」と期待を寄せるのは静岡県の内田謙一さん。
小売店では、「ブレンディ」ザリットルが環境に配慮した商品であることに加えて6R県民運動と地球温暖化防止の活動に賛同していることを示す「静岡県連携POP」を活用した売場づくりに取り組んでいる(詳細後述)。
ただしコロナ禍で店頭活動がままならなかったため、本格展開はコロナ収束後のこれからとなる。
店頭活動以外にも、キャンペーンに協賛するなどして認知拡大に取り組んでいる。
静岡県は7月から9月末にかけて、6Rを実践している写真や実践宣言を応募するキャンペーンを実施。そこでAGFはその賞品の1つとして「ザリットル」を提供した。
その手応えについて、白坂優樹さんは「今年はAGFさまなどからダイレクトにエコ活動につながる賞品を出していただき、県民に知っていただく機会につながったと手応えを感じている」と振り返る。

海洋プラスチックごみ防止と並ぶ静岡県エコ活動の柱である地球温暖化防止の取り組みでは、2018年6月5日の環境の日を境に、クルポ事業「ふじのくにCOOLチャレンジ・クルポ」の展開を開始した。
クルポとは、スマホアプリの名称でクールポイントから名付けられ、楽しみながら温暖化防止活動を実施してもらうことを目的に導入された。
県民がクルポで複数ある脱炭素アクションに挑んでポイントを貯め、30ポイントで賞品が当たる抽選に参加できる仕組みになっている。
クルポ担当の市川和美さんは「一見して温暖化防止とは無関係に思えるところと連携できるのがクルポを取り入れた理由の一つ。身近にある食品や飲料のパッケージを通じて地球温暖化防止を伝えていけば県民の方々にも広まりやすいと考えている」と述べる。
現在、クルポの登録者数(ダウンロード数)は1万4000人で、累計約40万件の脱炭素アクションが行われた。
今後は、登録者数、特に若年層の登録の増加を目標に掲げる。
クルポの実務を担当する酒井静香さんは「もともと若年層への浸透を目的に始めたが現状は40代が一番多く、その次に50代、30代が多い。20、30代にもっと興味をもらえるように今年から脱炭素アクションに『エシカル商品の購入』を追加し、そこに知名度のあるAGFさまが加わって下さったことは大きい」と期待する。
この「エシカル商品の購入」には、AGFインスタントコーヒーの詰め替えタイプも対象になっているが、若年層の登録を促すという点では、とりわけ「ザリットル」に期待が寄せられる。
「お茶の品揃えが多い『ザリットル』は全世代に飲まれる商品。20、30代の親御さんにダウンロードしていただき、小さいお子様にも環境について考えるきっかけになればいい」(市川さん)との見方を示す。
脱炭素アクションには6R県民運動も盛り込まれ、静岡県くらし・環境部環境局で廃棄物リサイクル課と環境政策課の連携も行われている。
新たな動きとしては、クルポが大学のゼミの研究対象になりSNSなどでの情報発信が予想される。
今後については、来年4月に導入・施行予定のグリーンライフ・ポイント制度とプラスチック資源循環促進法を追い風に情報発信を強化していく。
AGFとしてはコロナ収束に伴い「静岡県連携POP」の露出拡大を図るべく店頭活動を本格化させる。
AGF静岡営業所の入江彰彦所長は「やはり流通様に環境に配慮した価値をしっかりお伝えし、バックアップをいただくことが大切。そのさい行政からフォローをいただくと説得力が格段高まることから、三者一緒になって取り組んでいきたい」と意欲をのぞかせる。

これまでコロナ禍で店頭活動が思うようにできない中、小売店で先駆けてこの趣旨に賛同したのがツルハホールディングスの杏林堂薬局だった。
杏林堂薬局は「静岡県を応援」を掲げ、ドラッグストアの枠にとらわれず医・食・スポーツを通じた元気とキレイの創造業企業として健康づくりのインフラになることを目指している。
複数の店舗で「ブレンディ」ザリットルを導入し、静岡山崎店ではエンドで大陳を展開。
その反響について同店の峯野凌一ドライフードマネジャーは「見やすい位置に置かれていることもあり、『ブレンディ』ザリットルを一度手に取り、見た上で買われるお客様がすごく多いという印象がある」と語る。
一方、営業の最前線に立つAGF静岡営業所の日隈裕亮主任は「ブレンディ」ザリットルについて「静岡県ではかなり高いご評価をいただき、秋冬も継続していただく流通企業さまや、この春夏の販売動向をみられて新たに導入を決めて下さる流通企業さまもある。販売いただくには価格というお話になりがちだが、持続的に流通企業さまとお取引する上では、環境に配慮した商品である価値をしっかりお伝えし商品をご提案するという両輪で販売を継続して行きたい」との見方を示す。
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