アルミ缶需要が世界的に増加 環境意識と低アル飲料の広がりで米子会社が過去最高売上げ 東洋製罐GHD

東洋製罐グループホールディングス(GHD)の22年3月期第2四半期連結業績は、世界的なアルミ缶の需要増加が貢献し増収増益となった。

9日、決算発表に臨んだ大塚一男社長は「缶需要の増大は当初予想していた以上のスピードで進んでいる。一番伸びているのは北米で、中国、欧州、南米も増加傾向が顕著。その背景には脱プラ・環境に敏感な世代が缶を選択し、ハードセルツァーなどの低アルコール飲料やワインといった新しい缶飲料の台頭がある」と語る。

アルミ缶が牽引した包装容器事業の売上高は、リベート会計処理など収益認識基準変更額96億円を加味すると、前年同期比で実質119億円増収の2千585億円となった。

大塚一男社長(東洋製罐グループホールディングス)
大塚一男社長(東洋製罐グループホールディングス)

米子会社のストーレマシナリーは過去最高の売上高を更新し、「24年まで受注を受けている状況」という。日本国内でも家庭内での低アルコール飲料の需要増で缶容器が好調。高まる需要に、4月に東洋製罐石岡工場を稼働しアルミ飲料用空缶生産設備の増強を図って対応したことが奏功した。

「世界的にみると、新興国もGDPの拡大に伴い缶飲料が増えるというのは過去の統計でもみられている。今まで缶の伸びが鈍化していた先進国と新興国の両方で缶市場が拡大しており、この傾向は今後も続くとみている」との見方を示す。

日本酒のアルミ缶(東洋製罐)
日本酒のアルミ缶(東洋製罐)

海外では缶入りミネラルウォーターも出回り始めているという。ただし、日本ではペットボトルの水平リサイクルが進んでいることから「一概にすべて『プラスチックから金属容器に』ということは日本では考えにくいと思っている」。製缶と充填が一体化した新コンパクト製造ラインを提案し、世界最軽量のアルミ缶にも挑む。

このほど、アルミ缶の内側と外側の両面にポリエステルフィルムを熱圧着させた「aTULC」で製缶・充填一体型の新コンパクトラインを構築した。

通常のアルミ缶の製造工程では、アルミコイル(アルミ板)を加工する際、大量の潤滑油を使い、その後、大量の水を使って洗浄しなければならない。新コンパクトラインでは、ポリエステルフィルムを熱圧着させたアルミ缶を使用することで潤滑油と水の使用を不要とし、CO2排出や廃棄物の大幅な削減を可能にする。これにより大規模設備を不要とし、飲料メーカーの工場内での製缶が可能となる。

世界最軽量のアルミ缶「aTULC」のイメージ(東洋製罐)
世界最軽量のアルミ缶「aTULC」のイメージ(東洋製罐)

350㎖標準缶の重さが11g。これを新たな缶底成形方式などを導入して2.2g軽量化する。このような設備のコンパクト化と軽量化、空缶輸送の削減によって、年間の大型トラック3千685台分の移送が不要となる。

新コンパクト製造ライン導入の進捗については「米国で初めて出荷できる予定。米国では缶の供給不足が慢性化していることから、小規模の数量を扱う企業からの引き合いが強まっている。新コンパクト製造ラインは空缶の輸送がなくなるので軽量化について非常にいい環境。『aTULC』などの容器も環境にやさしい容器ということで、世界的に認めていただけると期待している」と説明する。