かりんとう コロナ下で市場拡大 若年層獲得へテコ入れ活発 新たなフレーバー展開も

日本の伝統菓子であるかりんとうは、一説によると奈良時代に日本に伝わり庶民には手の届かない高級菓子だったが、明治初期には浅草の仲見世で評判となり、庶民のお菓子として親しまれるようになったとされている。

約10年前にかりんとうブームが起こり話題となったが、コアなファンに支えられ、ここ数年は大きな波もなく安定した市場となっていた。ただ20年は約5割のチャネルがスーパーだったことが功を奏し、コロナ禍でまとめ買い需要の高まりや、安心な商品を買いたいという消費者インサイトから2.6%増(180億円)と伸長した。かりんとう市場は上位4社で5割強のシェアを占め、東京カリント26%、夏目製菓10%、三幸製菓9%、山脇製菓8%となっている。流通NBは、圧倒的シェアを持つ東京カリントと、かりんとう事業を始めて10年、飛躍的にシェアを伸ばしている三幸製菓の二本柱となっている。

東京カリントの21年6月期売上高は、46億円とコンビニのPBが厳しかったものの、スーパー・ドラッグストア、生協の売上が好調に推移し前年実績をほぼカバーした。同社は、かりんとう市場の課題に「コアユーザーの高齢化」「健康志向の高まりによる高カロリー摂取への抵抗感」を挙げる。解決策として「それいけ!アンパンマン」のライセンス契約を締結、国産原料にこだわった「それいけ!アンパンマンおやさいかりんとう」を21年9月に発売し、幼少期からかりんとうに慣れ親しんでもらう施策や、SNS活用による情報発信を開始した。また、食べ過ぎずカロリーコントロールのできる分包商品の拡売や低糖質商品の開発も進め課題解決に取り組んでいる。

同社は今年創立70周年にあたり、精力的に取り組みを強化している。大きな「蜂蜜かりんとう黒蜂」の製作でギネス世界記録の樹立に挑戦、全国油菓子工業協同組合が制定した11月10日の「かりんとうの日」にギネス世界記録を達成した。世界最大のかりんとうは、重さ6千380g、長さ1千52mmにも及ぶ。また、かりんとう市場売上№1の「蜂蜜かりんとう25g黒蜂×5P」をはじめとした売れ筋商品を、70周年限定デザインでさらなる拡売を図る。

かりんとうの市場規模推移
かりんとうの市場規模推移

一方、米菓業界の上位メーカー・三幸製菓は、10年前にコメ以外の原料に挑戦したいとの思いもあり、かりんとう事業に参入。当初4千万円からのスタートだったが、19年に発売した「ミックスかりんとう」がヒット、21年度9月期売上高は17億円と年々シェアを拡大し、かりんとう市場に旋風を巻き起こしている。21年度下期は25%増と調子を上げ、定番の「雪の宿ミルクかりんとう」の季節フレーバー展開や、小容量の価格帯違いの商品を発売し好調に推移した。

同社も「若年層の獲得」と「健康志向の高まり」をかりんとう市場の課題としている。9月には「懐かしいお菓子」のイメージを覆し、若年層にかりんとう売場に足を運んでもらうため、三戸なつめさんを起用したTVCMを9月から放映した。

また脂質を75%カットした「油で揚げないかりんとう」を発売し、小売の反応も上々のため育成に注力していく。22年度は目標売上高25億円。まだまだ伸長の余地があるカテゴリーとの考えから、引き続きフレーバーの横展開や価格帯の拡充、食シーン拡大に向けた商品開発も進めている。

かりんとうは黒糖フレーバーが市場の7割以上を占めているが、付加価値やフレーバー展開、価格帯の幅を広げる商品ラインアップの強化、NB2強メーカーのようなプロモーションによる若年層の獲得などが、今後の伸長には欠かせないものとなっている。