厚生産業 発酵食品の素晴らしさを伝承 健康ブーム追い風に商機拡大 里村大像社長に聞く

塩こうじ、甘酒、ぬか漬けの素――。健康志向や美容意識の高まりを背景に巻き起こった数々の健康食ブームは、いまや「発酵食品」という大きな括りで、われわれの食生活における最重点ワードの一つとなっている。漬物の素や米こうじ製品を手掛ける厚生産業(岐阜県揖斐郡)も、こうしたブームの中で自社製品の存在感を高めてきた。

同社は、1959年創業。前身である薬局時代、地域生活者に提供していた自家製漬物の素が評判を呼んで店頭売りを開始。それがやがて農協(現JA)との取引につながり、全国規模で商いを広げていく。

「創業当時は、国民の生活水準を高めるための生活指導活動が盛んで、そうした中に漬物作りもあった。啓発活動と合わせ商品を販売するという営業スタイルで、そこでお客様の声を聞きながら商品の改良や新規開発にもつなげていく。これが研究開発型企業として成長発展してきた当社のルーツ」と里村大像社長は語る。

里村社長は1955年生まれ。食品商社勤務を経て82年6月、厚生産業に入社。先代から託された一般小売店ルートの販路拡大に尽力。90年から現職に就いた。

この間、同社のインフラ整備、商品開発も大きく前進していく。「漬物の素の製造は、混合器と充填機で事足りるところがあったが、最初のヒット商品である『麹漬けの素』を拡販していくために麹製造プラントなどを導入。設備が大型化していったのが最初の大転換点だった」と振り返る。

89年には第2工場を開設し、粉体機械設備を導入。ヒット商品「あっさり漬けの素」などの生産能力が大幅に上昇した。漬物の素以外の麹製品の開発も推進。さらには熟成麹ラインを整備し、世の中の簡便化ニーズに沿った製品作りを強化する。

塩こうじや甘酒ブームはまだ記憶に新しいところだが、ぬか漬けの素は健康軸に加え、コロナ禍による内食需要増がブームを後押し。同社の主力製品「熟成ぬか床」も大きく数字を伸ばした。

ECでの販売も好調だ。「お米と米麹でつくったあまざけ」や「冷蔵庫で育てる熟成ぬか床」のスターターセットは大手通販サイトで1位を獲得。ファンの裾野を一気に広げた。

「当社の使命は『発酵食品の素晴らしさ』と『手作り食品の正しさ』を伝えていくこと。むやみに手を広げるのではなく、使命を実現するために、麹の有用性が発揮できる分野に資源を集中する。こういうニッチな分野では、売上やシェアよりも常にフロントランナーであり続けることが大事」とする。20年には第3工場を新設。新たな商品開発に乗り出した。

また、同じく20年にはFSSC22000を認証取得。安心安全の強化にも力を注いでいる。

「私が経営者として取り組んできた一番のポイントは経営理念を明確に打ち出すこと。社是、企業使命、経営姿勢、行動指針。この4つを徹底してきたからこそ、今の当社がある。社員一人一人に対しても使命達成のために何をすべきか、自身の成長を促せるよう、方向性を示していきたい」。