日本ハム 新たな領域へ挑戦 常温品、機能性分野など 畑佳秀社長に聞く

日本ハムは常温商品の拡充や食肉事業のブランド強化、畜肉の成分を活用した機能性分野の研究など「新たな領域への挑戦」(畑佳秀社長)を進めている。消費環境が大きく変化する中、「従来にない付加価値を持った商品でなければ収益性を高めることはできない」と語る畑社長に単独インタビューを行い、強化すべき新分野や今年春に始動した「北海道プロジェクト」について聞いた。

――昨今の消費動向をどのようにとらえていますか。

畑 われわれの売上の約4割はコンシューマー以外の外食を含めた業務用であり、その部分はまだ厳しい状況にある。

一方で外食に行かない分、コンシューマー商品には「イエナカ充実」の志向が見られる。そのためハレの日のプチ贅沢を狙った商品提案が求められる。ただ、可処分所得が上がらない中、節約志向が強まっているのも確かだ。

――そのような消費環境の中での商品政策は。

畑 これまでにない付加価値を持った商品でなければ収益性を高めることはできない。メーンとなる事業の基盤強化とともに、新しい領域への挑戦が重要だ。

従来われわれが得意としていた冷蔵・冷凍だけでなく、常温食品にも力を入れている。今年発売した「あじわいレンジ」シリーズはフレッシュ加熱製法という方法により、素材の形や味をそのままに、作り立てのような美味しさに仕上げた商品。常温の特徴を生かし、スーパーだけでなくさまざまなチャネルへ幅広く展開していきたい。爆発的というほどではないが順調に広がっており、調理加工品分野での成長を期待している。

――食肉事業の取り組みについて教えてください。

畑 食肉はこれまで培ってきたバーティカル・インテグレーションシステム(生産・飼育から加工、物流、販売まで一貫して自社で手掛けるシステム)をさらに強固なものにする。生産力と調達力を高めることが、販売力の強化につながると考えている。

そのため、国内外に157ある自営農場の生産力を高められるよう設備投資を行う。生産農家とのパートナーシップを強めるとともに、社外仕入と海外原料を含めた3極それぞれを強化する。

代表ブランドである「桜姫」が来年20周年を迎える。新たな販促活動を打ち出すとともに、「桜姫」「麦小町」に次ぐブランド肉の開発を進めている。前期から新たに食肉マーケティング推進室を設け、加工事業と連携しながら、お客様視点の活動を進めている。2030年に国内シェアを現状の20~21%から、25%に高めるという目標を達成したい。

――今後の商品開発について。

畑 研究開発を進めている一つが培養肉。インテグリカルチャー社と連携し、牛・豚から取った細胞を培養して、食感だけでなくコスト面も含め同じようなものができないか研究を進めている。

もう一つ商品開発の段階に入っているのが、鶏むね肉に含まれるイミダゾールジペプチドという成分。今まではアスリートの疲労回復に効能があるということで、スポーツドリンクや粉末剤として販売していた。

東京大や九州大、国立精神神経医療研究センターなどと共同で研究を進め、その成分が認知機能改善にも効用があるということが証明され特許を取得した。年内をめどに、その成分を使った商品を発売する。12月に開かれる予定の東京栄養サミットで海外に向けても発信する。このほか、食物アレルギー予防食の開発も医療機関と連携し進めている。

――この4月に始動した「北海道プロジェクト」とはどういうものですか。

畑 北海道に105の製造工場や販売・物流拠点を持ち、従業員の約1割が道内拠点で業務に勤しんでいる。23年開業予定の新球場、循環型農業、根強い北海道ブランド、これらを活用し北海道経済にも役立てるよう行政や地域との連携を深める。また、食の大地である北海道を冠した、ブランド力ある商品を全国へ向けても展開したい。今年5月に稼働した旭川の新工場も最大限活用する。

サスティナビリティ活動は事業に付加するのではなく、事業と一体化することが大事。環境を維持・向上させながら、事業も発展させるのがわれわれの使命だと思っている。北海道の取り組みはそれを具現化するものになる。